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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (11-1)

§11の1 吊り縄

 

縄を教えて貰いに、

若手の家に、結構出入りするようになると、

最初は、布団を丸めたものを、

人に見立てて、

基本的な、腰縄の廻し方や、

股縄の取り方について教わった。

 

改めて、

若手の家に出入りしてみて、

分かったこと。

 

それは、

 

部屋の中にあった、

あの工事現場で、

見掛けるような、

足場のパイプは、

 

洗濯物を干すためではなくて、

 

若手が吊り用に作った、

「吊り床」 だったことだ。

 

親方たちは、

縄で 「吊り床」 を作っていたが、

若手は、縄で床を作った上に、

吊りにカラビナを使っていた。

 

自分が直接、師事していたわけでもないし、若手が、直接その人から教わっていたのかどうかは、今となっては知る由もないが、当時は、縄で 「吊り床」 を作るのが一般的で、調べてみると、当時、一番最初に、カラビナを使っていたのは、長田英吉という人だった。

 

この時期、練習する相手は、
若手と自分の二人だけ。

 

自分も、吊られる感覚を、

自分の身体で実感するために、

若手に縛られて、吊るされた。

 

習いに行ってるところでも、

練習生同士が、お互いに

縛り合っているらしい。

 

頭で考えると、

 

吊ると言う行為は、

人の身体の全体と、

部分を捉えて、

その 「重心」 を、

どのように支えるかという、

「体重の分散」 と、

吊り上げるときの

「体重移動」。

 

高校で習った、
「物理」 で言うと、
「重心」 を、意識して、
「力点」 と 「支点」 と、
「過重点」 による、
「テコの原理」 を、
考えればいいだけであるが、

しかし、

人の身体は、

圧迫されると、

痛いところや、

痺れるところも、

あるし、

 

強い所と、弱い所があり、

何処でも同じように

支えられるものではない。

 

曲がる方向と、

曲がらない方向もあれば、

強い方向と、

弱い方向もある。

 

腰縄ひとつを取っても、

 

腰縄が、腰骨の下に入る場合と、

腰骨を挟む感じで縛る場合の

感覚の違いや、

 

 

言葉だけだと、

感覚的な説明は難しく、

吊られてみないと、

分からない感覚だった。

 

―――――――――――――――――

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (10-5)

§10の5 バイトの顛末

 

ママからの、

 

アルバイトの

オファーに、

 

思わず、

 

お店に

入って来たとき、

 

入れ替わりで、

出て行った

女性が、

手に

持っていた

 

分厚い財布が、

脳裏を

過ぎる。

 

 

 

   「真っ裸で、

    逆さに吊られて、

 

    その後、

    どうされちゃうの?」

 

と、

 

恐る恐る、

尋ねると、

 

 

 

 

ママは、

 

   「それは、

 

     和子ママ

     次第だけど、

 

     多分、

 

     鞭で

     いっぱい

     叩かれて、

 

     最後は、

 

     手で

     アソコを、
     しごかれて、


     皆の前で、

     出されちゃう、

 

     かもね・・・」

 

と、

 

薄ら笑いを

浮かべて、

 

言った。

 

 

 

顔は、

マスクで

隠れていても、

 

 

後ろ手で

縛られた上、

 

全裸で、

逆さ吊りに
されて

 


・・・

 

しかも、

 

 

大勢の

人の前で、

 

出されて、

しまうのだ。

 

 

 

その光景を

想像し、

 

思わず、

 

青い顔をして、

 

   「げげげっ」

 

と、洩らすと、

 

ママは、

 

ケタケタと、

笑い出し、


1オクターブ低い声で一言、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「うっそー!」

 

と返すと、

 

ママの薄ら笑いは、

一気に、

 

   「アハハハハハー」

 

と、爆笑に変わった。

 

ここのママには、いつも適わなかった。

 

―――――――――――――――――

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (10-4)

§10の4 珍しい客

 

縄の仕込みを、手伝ってからは、

学校とアルバイト以外は、

若手の家に遊びに行って、

若手が教わってきた、吊りを教わったり、

若手と遊んでる以外は、

ママのスナックに顔を出すことが、

多くなってきた。


お店に入ると、

今日は珍しく、既にもう、

女性のお客さんが、飲んでいたのだが、

 

その女性は、

自分が店に入ってくるのに

気が付くと、

 

   「そろそろ、行かなくちゃ。

    じゃあ、よろしくね」

 

と言うと、席を立ち、

分厚い財布の中から、

萬札を取り出して

ママに手渡すと、

何やら、耳打ちをして、

帰って行った。

 

席に座って、

 

   「すごいお客さんだね・・・」 

 

と、ママに言うと、

 

以前、ママが勤めていた、

「中野クィーン」 のママらしい。

そのママも、以前は、親方に縄を習っていて、

 

ママが入店したときに、しっかりと緊縛を、

習うように薦めたのも、和子ママだったそうだ。

 

 

ママが勤めていた当時は、

お店で、和子ママがプレイすることは、あまりなく、

縛ると言っても、後ろ手で縛るか、

菱縄くらいのもので、あとは、足を縛って、

滑車で吊り上げる程度だったそうだ。

 

当時メインで働いていた女王様は、

和子ママの知り合いが多く、

 

ママの場合は、どちらかと言うと、

和子ママが出るときの、

緊縛のアシスタントとして、

働くことが多かったらしい。

 

ママは、お絞りと、グラスを出すと、

 

   「まだ、彼女出来ないの?」

 

と、先程の入店時に、

言いそびれた、

いつもの、恒例のせりふを言って、
迎えてくれた。

 

どうも、日曜日に、和子ママは、

お得意さんと、寄り合いがあって、

ママは、そのお手伝いを頼まれたのだと言う。

 

銀座のクラブなど、

知り合いから紹介される接待や、

お得意さんなどの寄り合いは、いつも、

和子ママが直接、取り仕切るのだと言う。

 

   「良かったら、アルバイトやる?」

 

   「えっ、どんなアルバイト?」

 

と聞くと、

 

素っ裸で、縄で足を縛られて、逆さまに、

吊るされるのだと言う。

 

 

顔は、頭からマスクとかを被れば、

誰か分からないように、することはできるけど、

下半身は、露出させたままだと言う。

 

   「きっと、和子ママのことだから、

    かなりのお金、もらえるわよ」

 

ママは、自分を見ると、薄ら笑いを浮かべながら、そう言った。

 

―――――――――――――――――

 

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2018/05/10

ホテル代も出せない男はエッチするな

こっそりと 「アメンバー限定」 で、ブログを書かれている、ブロ友さんの女性の方が、同名のタイトルで、記事を書かれていました。

そう言えば、最近、「女性同士のリアルな会話」 でも、同じ台詞を聞いたかも 滝汗

 

まあ、昔風に言うと、「男の甲斐性」 ってヤツですが、それは、喰えない女性を、妾として囲っていた時代の話。

自分と縁戚関係にある某政治家は、国会答弁で、4人の妾を追及され、4人ではなく、5人でありますと答えて、追及を逃れたとか。

 

以前、飲み屋をしていたとき、目の前で、若い社会人の男女が、1円単位まで、「割る」 光景を目にしたときは、さすがに目を丸くしたものですが、それは、「男が奢らない」 ことに対してではなく、レジの前で店主を待たせ、人前で割る行為に恥を感じないセンス、に対してであって、割り勘自体を否定しているわけではありません。

まずは、自分で全額を払って、あとで半分請求すれば良いわけです。

 

では、「ホテル代」 は、どうなのか?

 

女性は、出来れば 「受け身」 で居たいもの。

女性が自分で払ってしまうと、あたかも、自分が男を連れ込んだ感じに、なってしまうわけです。

どんなに自分が、その男に惚れていても、

 

   「わたしは嫌だったけど、口説かれて、仕方なく着いて来たの・・・」

 

という体裁を繕いたいのが 「女心」

 

そんな 「女心」 を汲み取れるくらいの、「粋」 な男になりなさい・・・というのが、「男がホテル代を持つべき」 論の 「スピリット」 であって、そもそも、これは、先輩後輩あるいは上司部下といった、「男同士の会話」 が、基本になっているのです。

 

ところが、バブル時代は、そんな 「粋」 など、どうでもよし。

女性は、奢られて当たり前。

男は、その特性に応じて、アッシーくん、メッシーくん、貢くんなどと、使い分けられる時代が到来しました。

 

男が、男に言うのなら、まだいいんです。「粋」 です。

 

しかし、女性が、まるで 「既得権」 を放棄したくないかのように言うのは、心情は分かるものの、

 

   「それを言っちゃあ、お仕舞いよ・・・」 ってなわけで・・・

 

そもそも、そういうのは、「野暮」 と言うものです。

 

だいたい、この台詞を言う女性というのは、40代から50代。

バブルの全盛期、あるいは、その名残りの時期を、を生きてきた人達です。

 

しかし、全員が全員ではありません。

 

そもそも、お金があって、若いツバメを抱えているような女性は、金に糸目はつけませんし、

女性も、惚れているなら、そんなことは、気にしません。

 

言いたいのなら、陰で言わずに、本人に言えばいいだけのことですし、

嫌なら、会わなければいいのです。

「割り勘」 するだけの、お金もないなら、「お金がない」 と言えばいいだけですし、

半分出すだけの価値もないと思うなら、会わなければいいのです。ウインク

 

中には、自分に価値があるかのように、扱って欲しい女性も居ます。

「承認欲求」 ってやつです。

これが一番、タチが悪いのですが、「承認欲求」 は、「食欲」 や 「性欲」 あるいは 「睡眠欲」 といった 「生理的欲求」 とは異なり、広がりは無限です。チーン

 

男に 「粋」 な心遣いを期待するのであれば、女も 「粋」 でないと、格好悪いです。

 

形振(なりふ)り構わないのであれば、ゲスはゲス同士、ガツガツと、お互いに喰い散らかしていれば、良いわけですし、惚れた者同士なら、そんなことは気にせず、イチャイチャと楽しい時間を過ごせば良いのです。

 

「いつまでも続けたい」 と思っているカップルならば、自分も相手も、無理をしないこと。

 

***

 

ということで、長々と書きましたが、「ブログ主さん」 の書かれている考え方が、一番自然で、お二人にとっての 「正解」 だと思います。

2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (10-3)

§10の3 恋愛講座(2)

 

ママが何回も、口を酸っぱくして言っていたのは、

単に責めたい願望があるから、Sでもないし、

きれいに縛れるからと言って、Sでもない、と言うこと。

また、病理的なサ☆ディストであろうが、

社会に適合出来ない者には、「責める機会」

すら、与えられない、みたいなことだった。

 

まるで、今の自分のようだ。

 

大事なのは、お店と客にしても、人と人にしても、

信頼があって、初めて成り立つ関係だと言うこと。

 

なので、昔勤めていたお店では、

あいさつを含め、

とても礼儀が、重んじられて、いたらしい。

 

Mは、身も心も S に委ねることで、

そして、それに加えて、絶対者としての Sが、

責めを加えることによって、

普段、心の奥に封じ込められたものが

吐き出せるのだと言う。

 

そもそも、信頼関係すら、

成り立っていない状況下では、

単に怖いだけだ。

 

女性にしても、好きな人に

お尻を触られるのは、好きだけど、

キライな人に触られると、

当たり前だけど、ムカつくと言っていた。

 

Mの女性の中には、

 

痴☆漢やレ☆イプ願望などがある人も、

いたりするけれど、それにしても、

「好きな人」 にされたいのであって、

誰でもいいわけでは、ないと言う。

 

それと同じで、

 

Sとか、Mという性癖にしても、

特定の人に対して、出るものであって、

誰しも構わず、出るものではないのだそうだ。

 

友達同士の関係から、一歩踏み込んで、

恋愛関係になったから、と言って、

出るものではない。

 

その先にあるもの。

 

だからこそ、自分の感性を磨いて、

相手の持つM性を、

感じ取ることの出来る能力と、

きちんと相手に、

信頼と安心感を与えられるだけの、

器が、求められるのだと言う。

 

SMも、恋愛も同じだ、と言っていた。

 

女性が求めているものは、

 

一緒にいる女性に、気を遣ってあげたり、
一緒にいる女性を、見守ってあげたり、

いたわってあげたり、あるいは、

女性が楽しいことを、一緒に喜んであげたり、

心を通わせること。

 

友達同士の、其れではなく、

愛されている感覚。

 

ちょうど、お父さんが、自分の懐に、

愛娘を受け容れて、

守ってあげるような感覚、

其れなくしては、

女性は、安心出来ないのだ、と言う。

 

   「この上久保ちゃんも、

    人当たりは良いし、

    ガツガツしていないから、

    なかなか、隅に置けないのよ?」

 

と言うと、ママは、上久保ちゃんの方を

振り返る。

 

いきなり突っ込まれた、上久保ちゃんは、

また、自分のおでこをペシンと叩くと、

 

   「こりゃ、まいった」

 

と言って、一人、大笑いした。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (10-2)

§10の2 恋愛講座

 

ママ曰く、

 

人は、みんな同じではないし、

人には、それぞれに、与えられたものがあって、

他の人を見て、いくら妬んでも、意味がないと言う。

 

世の中には、誰とでも、打ち解けて、

すんなりと、お付き合い出来てしまう、人もいれば、

個性が強かったり、生き方が下手だったり、

いつも、壁にぶち当たってばかり、いるような人も、

いる。

 

ママなどは、
すんなりと、器用に、こなしてしまう人は、

一見、お洒落には、見えるけど、

人としての、深みに欠けてたり、

厚みがなかったりして、物足りなく感じると言っていた。

 

SM の世界に出入りしている人達は、
ある意味、SでもMでも、真面目で愚直で、不器用な人ばかり。

人は、頭では、理解しているように思っていても、

実際に体験してみないと、その意味は、

理解出来ない動物。

 

だから、何事も、実際に、自分で体験してみて、

いっぱい自分の身体で、感じてみることが大事だ、

と言った。

 

少し後から、店に入って来た、上久保ちゃんが、

 

   「いやぁ、ママは、良いことを言うね~」

 

と、言ったかと思うと、

   「若いって、いいねぇ~」

 

と、また早速、茶々を入れて来た。

 

年齢が若かったせいも、あるかも知れないが、

自分が、初体験を経験した女性と同じように、

自分を育ててくれようと、してくれていたみたいだった。

 

 

ママが昔、SMクラブで、女王様をしていた話は、

既にいろいろな人からも、話を聞いていたが、

自分が偏見なく、話をするせいか、

ママも、嫌な顔もせず、真摯に話をしてくれた。

 

一番最初に教わったことは、女性が男に惚れたら、

女性は誰でも、「その男に対しては、Mになる」

ということだった。

ママ曰く、それが、女性の本能らしい。

 

ママは、SもMも、どちらも、持っていて、

女王様になったのは、仕事としての側面もあったけど、

好きな男性にだけは、Mになるのだと言う。

女王様の、男性を威嚇するようなポーズも、

それは、営業スタイルのようなもので、

逆に、普段から肩を怒らせている人は、

弱い自分が見透かされるのを、

恐れている人だと言う。

 

そして、この上久保ちゃんは、

ママと同じように、SとMの両面がある男性で、

ママが女王様だったときに、

お客としてお店に来た人だと言う。

 

 

ママがそれを言うと、上久保ちゃんは、

まさか自分の話が持ち出されるとは、

思っても見なかったようで、

 

自分で、自分のオデコを 「ぺしん」 と叩くと、

 

   「こりゃ、まいった」

 

と言って、一人、大笑いしてした。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (10-1)

§10の1 モテない悩み

 

その日以来、アルバイトで、給料が入ったりすると、

そのスナックに、顔を出したりするように、なっていた。

 

例の女の子と、出会って以来、

近い年齢の子をナンパして、デートしたり、
みたいなことも、なくなっていた。

そもそも、毎日が、ハレの日ばかり、

であるはずもない。


学校の授業と、アルバイトの毎日。

学校が理系だったこともあるが、

女の子との、出会いは皆無の毎日だった。

 

出会いが少ないことも、

問題だったが、

付き合いが続かない、

というのも、大きな問題だった。

 

自分の初体験が、

普通ではなかったから、

なのかと、悩んだりもした。

 

身体の中から、込み上げてくる

「性の衝動」 と、

心の中から、滲み出てくるような、

「恋愛感情」 は、

自分の中では、全くの別物であり、

完全に分離して、しまっていて、

結び付いて、いないのである。


告白して、振られては、悩み、

デートして、

 

   「わたしは、アナタの何なの?」

 

と言われては、困惑し、

 

ようやく、お付き合いに持ち込めた、としても、

お互いに、自分の思い通りに、なるはずもなく、

別れては、凹む。

 

玉砕の連続だった。

 

一方では、ナンパして、

そのまま、ラブホに直行して、

お互いに貪りあっても、

多くは、一晩限り。

 

聞き出した電話番号に、

電話を掛けてみると、

 

   「お掛けになった電話番号は、

    現在、使われておりません。

    電話番号を、もう一度お確かめになり・・・」

 

なんて言う、録音メッセージが

聞こえてくる場合も、少なくなかった。

 

 

まだ、お店も準備中の、早い時間、

店を訪れると、ママには、

 

   「こんな早い時間から、お店に来て。

    彼女とか、いないの?」

 

みたいなことを言われ、

ママに何度か、相談したことがあった。

 

ママは、買出してきた食材を、

冷蔵庫にしまったり、

お通しを準備しながらも、

いろいろと相談に乗ってくれた。

 

ママは、SM の世界も同じだ、と言っていた。

 

緊縛にはまって、縛ることばかりに

一生懸命になる人もいれば、

 

心の繋がりなどは、全く、関心がなく、

その場限りのプレイで、十分に、

満足な人もいるし、

 

プレイの背後にある、

心の繋がりを重視する人も、

いるのだと言う。

 

世の中、どれが正解で、

どれが正しいというものは、

ないけれど、

 

やはり、心がガッツリと入ったときの、

充実感に勝るものはない、

と、ママは言っていた。


   「どうしたら、そうなれるの?」

 

そう聞くと、

 

ママは、アイスピックで

氷を掻きながら、

 

   「いっぱい、悩んで、

    いっぱい、涙を流して、

    いっぱい、苦しみなさい・・・」

 

とだけ言った。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (9-3)

§9の3 また、一人増える

 

「祐さん、もう一本、いくでしょ?」 と、言うか言わないかの

タイミングで、もう、ビールの栓を開けているママ。

 

そうこうしていると、また、入り口のドアが開いた。

 

   「ママ、お店やってるの?

    表の店の看板、電気が点いてないよ?」

 

そう言うや否や、既にお客さんは、席に座ろうとしていた。

 

   「あらっ、上久保ちゃん!」

 

日曜日は、この店の定休日なのだが、

開いていると、入って来てしまうのが、

常連客の性(さが)のようだった。

 

   「もう、こうなったら、

    お店開けちゃうしかないわね・・・」

 

と、ママが言うと、

 

   「えっ??ママ、お店開いてたよ?」

 

と、ボケる客。

 

   「もう、今日は来る客、皆、変態ばかりね」

 

と、ママが言うと、

 

   「えっ??ママ、こちらの、お二人さんも?」

 

と言って、自分達の方を、覗き込む。

 

「そう」 と言って、こちらは、以前、親方のところで、

働いてた富ちゃんだけど、

上久保ちゃん、何回か、会ってない?

と、ママが聞くと、

どうやら、お互い、顔は見覚えがあるけれども、

今まで話したことが、ないらしい。

 

今日は、親方のところで、縄仕込みがあって、

こちらは、富ちゃんのお連れさん、と紹介されると、

 

   「今どきは、こんな若い子が、

    縛りをやるの? 世も末だね~」

 

とか、

 

   「縄跳びで、縛ってるの?」

 

などと、突っ込んで来たか、と思うと、

   「あっ、それは、オレか?」

 

みたいに、ひとりで、ボケを入れて来る。

 

どう反応したら良いのか、わからず、

戸惑いもあって、ひとまず、笑っていると、

 

   「この前、縛りを見せて貰ったけど、
    なかなかでしたよ」

と、若手が、助け舟を、出してくれた。

 

すると、年配の人が、


   「おう、若いの、吊りはやるのか?」

 

と、即座に反応する。

   「いえ、そこまでは、まだ・・・」

と言葉を濁すと、

 

若手は今、縄師に付いて、
吊りも含めて、「縛り」 を習っているのだという。

若手は、一緒に習いに行こうと、
誘ってくれたが、やはり学生は、
先立つものがないのでと、断わると、

 

じゃあ、ウチへ来て、練習すればいいと、
誘ってくれる。

すかさず、そこへママが、若い男二人なら、

   「わたし、受け手で、行っちゃおうかな?」

と言うと、上久保ちゃんが、

   「ママが行ったら、
    若い男二人、逆に縛られて、

    食べられちゃうから、

    気を付けないと」

と言って、大笑いする。

   「もう、わたしの邪魔したら、

    お尻をペシンするよ?!」

 

お店の中が、楽しい会話で、溢れていて、

同じ趣味の人が、集っているという、

安心感が、お店の中に漂っていた。

 

夜も更けて、

 

若手は、明日の朝が早いらしく、

自分も学校があるので、

幾らかお金を置いて、

帰ろうとするが、

 

ママは、どうしても、

お金を、受け取ってくれない。

 

ご馳走さまを言い、

 

   「また、来ます・・・」

 

と言うと、

 

若手と自分は、店を後にした。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (9-2)

§9の2 一人増える

 

年配の人は、もうかなり、

出来上がっているようだった。

 

年配の人が、何の話をしてたんだ、と聞くと、

ママが、昔の話をばらされちゃった、

と言いながら、ビールの栓を開け、

年配の人のグラスに注ぐ。

 

ママは、自分達のビールも、

栓を開け、自分達のグラスにも注ぐと、

再度、皆で、乾杯をした。

 

ママは、客よりも一足早く、

飲み干し、年配の人のビールを

手に持つと、

 

   「祐さんは、もっと

    凄いのよ・・・」

 

と言って、

年配の人が飲み干したグラスに、

また、ビールを注いだ。

 

   「てやんでぃ・・・」

 

年配の人は、自分からは、黙して語らないが、

若い頃、赤坂にあった星ヶ岡茶寮で、

働いていたことが、あると言う。

戦時中、赤紙が来るまで、

飯炊きと漬物の班に居たらしい。

 

終戦後、復員して、いろいろと

仕事を転々としたが、

今の親方とも、当時の先輩のつてで、

知り合い、それ以来、今の親方に、

世話になっているのだ、と言う。

 

当時の自分は、まだ学生だったので、

世間の一般常識であったり、

一般教養というものは、皆無に等しく、

ただ、良くは分からないけど、

凄い人なんだ・・・とだけ、記憶していた。

 

ちょうど、その年、北大路魯山人や星ヶ岡茶寮をモデルとした、グルメ料理漫画である、「美味しんぼ」 の連載が始まったこともあり、かろうじて、それになぞらえて、記憶に留まっている程度だった。

後日、祐さんから、話を聞いたところによると、誰もがそこで修行したかったため、採用は順番待ちになるほどで、一方、当時は人件費も安かったことから、大量に料理人が採用され、飯炊きなら飯炊きだけ、漬物なら漬物だけを、専門にやる班があったと聞いた。

 

地味な仕事だけれども、

あそこの料亭は、仕出しも含め、

羽釜で炊いた御飯と、

お新香にも、定評があると言う。

 

そこまで話したところで、

 

ママは、機敏にも、次第に、

年配の人が、苛々としてくるのを、

察すると、話をやめ、

 

ビールを継ぎ足して、瓶を片付けた。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (9-1)

§9の1 店飲み

 

店の中に入ると、煙草と淀んだ空気の臭いがした。

自分達が中に入ると、ママは、シャッターを、

膝下くらいの高さまで下ろすと、

カウンターの中に入って、グラスを出し、

瓶ビールの栓を開けた。

 

やはり、ママさんだけあって、カウンターの中に

入ると、キリリと気がしまるのだろうか。

やはり、カウンターの前に座っている、二人を

相手にした会話に、自然となる。

 

若手が、この店に連れられて来た頃の、

昔話から始まって、若手の近況や、

自分との関係などを、

気に障らない程度に聞いては、

合間に、自身のアピールも、忘れずに、

きちんと入れてくる。

 

   「煙草吸っていいかしら?」

 

ママは、そう言うと、ポーチの中から、

「キャビン」 を取り出した。

 

   「あれ?ママは 『チェリー』 じゃなかった?」

 

若手が不思議そうに聞くと、ママは、

 

   「藤竜也が好きだから、煙草、変えたの・・・」

 

と言うと、高そうな、

ダンヒルのライターを取り出して、

自分で、火を点けた。

 

若手によると、ママは、以前は、

「中野クィーン」 という、

その道では、知る人ぞ知る、

有名なお店で、働いていたらしい。

当時、親方から縛りを教わっていた関係で、

お店のオーナーの、相談を受けた親方が、

連れてきたのが、ママだと言う。

 

ママは、何を気に留めるでもなく、

 

   「単なる、雇われよ・・・」

 

とだけ言うと、煙をプカーッと吹かした。

 

話は、だんだんと SMの話になってきて、

当時女王様だった頃の、ママの体験話を

聞いていると、

 

   <ガラガラガラ・・・>

 

と、お店のシャッターの、

上がる音がするので、

皆、入り口の方を振り向くと、

 

   「開いてるのか?」

 

と言いながら、入り口のドアを開けて、

昼間、縄の仕込みでお世話になった、

年配の人が入ってきた。

年配の人は、カウンターに座っている、

自分達を見つけると、

 

   「お前ら、ここで飲んでたのか?」

 

と言って、壁に寄り掛かれる、

自分の隣りの、一番奥の席に座った。

 

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