【緊縛小説】 縄絡み (11-1)
§11の1 吊り縄
縄を教えて貰いに、
若手の家に、結構出入りするようになると、
最初は、布団を丸めたものを、
人に見立てて、
基本的な、腰縄の廻し方や、
股縄の取り方について教わった。
改めて、
若手の家に出入りしてみて、
分かったこと。
それは、
部屋の中にあった、
あの工事現場で、
見掛けるような、
足場のパイプは、
洗濯物を干すためではなくて、
若手が吊り用に作った、
「吊り床」 だったことだ。
親方たちは、
縄で 「吊り床」 を作っていたが、
若手は、縄で床を作った上に、
吊りにカラビナを使っていた。
自分が直接、師事していたわけでもないし、若手が、直接その人から教わっていたのかどうかは、今となっては知る由もないが、当時は、縄で 「吊り床」 を作るのが一般的で、調べてみると、当時、一番最初に、カラビナを使っていたのは、長田英吉という人だった。
この時期、練習する相手は、
若手と自分の二人だけ。
自分も、吊られる感覚を、
自分の身体で実感するために、
若手に縛られて、吊るされた。
習いに行ってるところでも、
練習生同士が、お互いに
縛り合っているらしい。
頭で考えると、
吊ると言う行為は、
人の身体の全体と、
部分を捉えて、
その 「重心」 を、
どのように支えるかという、
「体重の分散」 と、
吊り上げるときの
「体重移動」。
高校で習った、
「物理」 で言うと、
「重心」 を、意識して、
「力点」 と 「支点」 と、
「過重点」 による、
「テコの原理」 を、
考えればいいだけであるが、
しかし、
人の身体は、
圧迫されると、
痛いところや、
痺れるところも、
あるし、
強い所と、弱い所があり、
何処でも同じように
支えられるものではない。
曲がる方向と、
曲がらない方向もあれば、
強い方向と、
弱い方向もある。
腰縄ひとつを取っても、
腰縄が、腰骨の下に入る場合と、
腰骨を挟む感じで縛る場合の
感覚の違いや、
言葉だけだと、
感覚的な説明は難しく、
吊られてみないと、
分からない感覚だった。
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