【緊縛小説】 縄始め 6-3
§6の3 無欲と無力と無気力と
結局、最後の入試が終わるまでは、
彼女の家は、出入禁止。
合格したときの、お祝いの旅行は、
最後の入試の合格発表以降、
ということになった。
もう、その時期の記憶は、
抜け殻も同然の自分には、
何も残っていない。
無欲というよりは、無力。
孤独感と空しさで、満たされた自分にとっては、
クリスマスソングも、街頭で売っている、
クリスマスケーキの販売も、みんな他人ごと。
入試も、機械的にこなしただけ。
入試の前には、試験会場の下見に行き、
試験前日は、ぐっすり寝て、
試験日には、早めに会場に行き、
そして、坦々と試験をこなすだけ。
緊張すら、全く感じない変わりに、
点数を取ろうとする意欲も、何もなかった。
機械的に、簡単で確実な、稼げる問題から、解いて行き、
そして、解けた問題と、解けなかった問題をチェックし、
周りを見回して、女の子が居たら、チェックを入れたりも、したけど、
所詮、理系なんで、女子はそんなに多くない。
結局は、やることもなくなり、
煙草を吸いたくて、いつも早めに答案を出しては、
外に出て、彼女のことを思い出しては、煙草の煙を、燻らしていた。
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