【緊縛小説】 縄絡み (7-3)
§7の3 名残り
その後、頻繁に、
彼女に会ったか、と言われると、
現実は、そう上手くは、
行かなかった。
自分は、会いたかったので、
誘ったりもしたけど、
彼女は、学校の卒業もあったし、
就職の準備など、
結構、忙しい身だった。
自分の気持ちは、
彼女に 「首ったけ」 だったが、
彼女にしてみれば、
自分よりも、今、直面している
「現実」 の方が、
ずっと大きかった。
若かったせいも、あるだろう。
「あの日」 の思い出が、
「甘美」 と言うよりは、
「淫美」 であっただけに、
何故かに 「罪」 的なものを、
感じてしまったのかも、知れない。
彼女の家には、
固定電話があったので、
電話番号を教えてもらい、
何回も電話をして、
いろいろな話をした。
彼女の実家は、小さいながらも、
事業を営んでおり、
彼女が就職するのは、
その 「お得意サマ」 なのだ、
と言う。
縁が、なかったと言えば、
それまで、ではあるが、
しかし、いっときの熱情に
過ぎなくても、縁は縁。
今、思えば、それは、
若者や子供に対する、
周囲の、大人の期待であり、
家として、家の中の、あるいは、
家族の一員としての、
彼女の役割だった。
自分自身が、
経済的にも、精神的にも、
自立出来ていなければ、それは、
抗うことの出来ない、大きな壁。
それ以来、
彼女に会うことは、一度もなかった。
***
「あの時」 から、
半年くらい経った、ある日。
若手から、自分の家に、
電話が入った。
どうやら、縄の仕込みが、あるそうだ。
「是非、参加してみたい」
と言うと、
直接、親方に、
確認してみてくれたようで、
しばらくして、
折り返しの電話が入り、
いつもなら、前以って、
参加者全員に、
必要な、縄の本数を、
聞いているのだけれど、
4~5本程度なら、
問題ないだろう、とのことだった。
1本の縄の値段と、
待ち合わせをする、
場所と時間を確認すると、
あの、女の子の話は、
何も、出て来なかったので、
そのまま、受話器を置いた。
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