2ntブログ
2018/04/12

【緊縛小説】 縄始め 6-2

§6の2 話し合い


 


翌日、学校の終業式を終えて、早めに帰路に着く。


やはり、彼女の声を聞かないと、スッキリしない。


 


今度また、ご主人が出て来たら、どう返事しようかと


いろいろと、策を巡らす。


 


回覧板は、回覧の順路が違うので、使えないし、


業者のフリも、無理がある。


ようやく編み出したのが、彼女の郵便受けから、


郵便物をつまみ出して、これを、自分の家の郵便受けに、


誤配されたものとして、彼女の家に届ける戦略だった。


 


周囲を確認し、彼女の家の郵便受けから、なんとか、


斜めに引っ掛かっている封筒を、取り出すことに成功する。


 


12月の半ばも過ぎ、街や商店街は、クリスマス一色。


もう、肌寒い時期なのに、冷や汗が出るも、


意を決して、彼女の家のベルを鳴らす。


 


   「どちらさまですか?」


 


良かった、彼女の声である。


○○○号室の緒尾です、と名乗ると、直ぐにドアが開いて、


中に入れられた。


 



 


   「郵便受けに、会えないマークが


    貼ってあるのに、なんで来たの?」


 


彼女が、厳しい顔をして、問い詰めてくる。


仕方なく、会えない理由が分からなくて、いろいろと


気になってしまって、勉強にも、身が入らないことを伝えると、


彼女は、「ふ~っ」 と仕方なさそうな、ため息をついて、


自分を部屋の中に招いた。


 


   「ここに、座って・・・」


 


その声は、いつものように明るく楽しそうな声ではなく、


落ち着き払ったような、事務的な声だった。


 


   「お話があるの・・・」


 


カチャカチャと、いつもと同じように、紅茶を出してくれるものの、


いつもの雰囲気と、全然違う。


 


彼女曰く、前に会ったときに、きちんとお話しなかったのは、悪かったけど、


大学の入学試験も、もうすぐだし、そちらに集中してほしいこと。


そして、うちの家に、入り浸りになるのではなくて、


彼女を作ったりすることも含めて、若者らしい生活を、


楽しんでもらいたいと、思っていること。


 


そして、彼女が自分のことを、嫌いになったから、


こういうことを、言っているのではなく、


むしろ彼女は、自分のことを、好きだし、


大好きだからこそ、言ってるのだ、ということを、伝えられた。


 


自分のことを、好きだからこそ、自分のことを、


考えてくれている彼女と、自分のことしか考えていない


猿同然で、ヤリ目の、ガキンチョ 男子高校生との間で、


意思疎通が図れるはずもない。


 


そんな彼女が、考え出した懐柔策は、


自分が目指している大学に、合格したときには、


お祝いとして、一泊で、一緒に旅行に行こう・・・


というものだった。


 


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