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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (9-1)

§9の1 店飲み

 

店の中に入ると、煙草と淀んだ空気の臭いがした。

自分達が中に入ると、ママは、シャッターを、

膝下くらいの高さまで下ろすと、

カウンターの中に入って、グラスを出し、

瓶ビールの栓を開けた。

 

やはり、ママさんだけあって、カウンターの中に

入ると、キリリと気がしまるのだろうか。

やはり、カウンターの前に座っている、二人を

相手にした会話に、自然となる。

 

若手が、この店に連れられて来た頃の、

昔話から始まって、若手の近況や、

自分との関係などを、

気に障らない程度に聞いては、

合間に、自身のアピールも、忘れずに、

きちんと入れてくる。

 

   「煙草吸っていいかしら?」

 

ママは、そう言うと、ポーチの中から、

「キャビン」 を取り出した。

 

   「あれ?ママは 『チェリー』 じゃなかった?」

 

若手が不思議そうに聞くと、ママは、

 

   「藤竜也が好きだから、煙草、変えたの・・・」

 

と言うと、高そうな、

ダンヒルのライターを取り出して、

自分で、火を点けた。

 

若手によると、ママは、以前は、

「中野クィーン」 という、

その道では、知る人ぞ知る、

有名なお店で、働いていたらしい。

当時、親方から縛りを教わっていた関係で、

お店のオーナーの、相談を受けた親方が、

連れてきたのが、ママだと言う。

 

ママは、何を気に留めるでもなく、

 

   「単なる、雇われよ・・・」

 

とだけ言うと、煙をプカーッと吹かした。

 

話は、だんだんと SMの話になってきて、

当時女王様だった頃の、ママの体験話を

聞いていると、

 

   <ガラガラガラ・・・>

 

と、お店のシャッターの、

上がる音がするので、

皆、入り口の方を振り向くと、

 

   「開いてるのか?」

 

と言いながら、入り口のドアを開けて、

昼間、縄の仕込みでお世話になった、

年配の人が入ってきた。

年配の人は、カウンターに座っている、

自分達を見つけると、

 

   「お前ら、ここで飲んでたのか?」

 

と言って、壁に寄り掛かれる、

自分の隣りの、一番奥の席に座った。

 

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