【緊縛小説】 縄絡み (10-3)
§10の3 恋愛講座(2)
ママが何回も、口を酸っぱくして言っていたのは、
単に責めたい願望があるから、Sでもないし、
きれいに縛れるからと言って、Sでもない、と言うこと。
また、病理的なサ☆ディストであろうが、
社会に適合出来ない者には、「責める機会」
すら、与えられない、みたいなことだった。
まるで、今の自分のようだ。
大事なのは、お店と客にしても、人と人にしても、
信頼があって、初めて成り立つ関係だと言うこと。
なので、昔勤めていたお店では、
あいさつを含め、
とても礼儀が、重んじられて、いたらしい。
Mは、身も心も S に委ねることで、
そして、それに加えて、絶対者としての Sが、
責めを加えることによって、
普段、心の奥に封じ込められたものが
吐き出せるのだと言う。
そもそも、信頼関係すら、
成り立っていない状況下では、
単に怖いだけだ。
女性にしても、好きな人に
お尻を触られるのは、好きだけど、
キライな人に触られると、
当たり前だけど、ムカつくと言っていた。
Mの女性の中には、
痴☆漢やレ☆イプ願望などがある人も、
いたりするけれど、それにしても、
「好きな人」 にされたいのであって、
誰でもいいわけでは、ないと言う。
それと同じで、
Sとか、Mという性癖にしても、
特定の人に対して、出るものであって、
誰しも構わず、出るものではないのだそうだ。
友達同士の関係から、一歩踏み込んで、
恋愛関係になったから、と言って、
出るものではない。
その先にあるもの。
だからこそ、自分の感性を磨いて、
相手の持つM性を、
感じ取ることの出来る能力と、
きちんと相手に、
信頼と安心感を与えられるだけの、
器が、求められるのだと言う。
SMも、恋愛も同じだ、と言っていた。
女性が求めているものは、
一緒にいる女性に、気を遣ってあげたり、
一緒にいる女性を、見守ってあげたり、
いたわってあげたり、あるいは、
女性が楽しいことを、一緒に喜んであげたり、
心を通わせること。
友達同士の、其れではなく、
愛されている感覚。
ちょうど、お父さんが、自分の懐に、
愛娘を受け容れて、
守ってあげるような感覚、
其れなくしては、
女性は、安心出来ないのだ、と言う。
「この上久保ちゃんも、
人当たりは良いし、
ガツガツしていないから、
なかなか、隅に置けないのよ?」
と言うと、ママは、上久保ちゃんの方を
振り返る。
いきなり突っ込まれた、上久保ちゃんは、
また、自分のおでこをペシンと叩くと、
「こりゃ、まいった」
と言って、一人、大笑いした。
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