【緊縛小説】 縄絡み (10-2)
§10の2 恋愛講座
ママ曰く、
人は、みんな同じではないし、
人には、それぞれに、与えられたものがあって、
他の人を見て、いくら妬んでも、意味がないと言う。
世の中には、誰とでも、打ち解けて、
すんなりと、お付き合い出来てしまう、人もいれば、
個性が強かったり、生き方が下手だったり、
いつも、壁にぶち当たってばかり、いるような人も、
いる。
ママなどは、
すんなりと、器用に、こなしてしまう人は、
一見、お洒落には、見えるけど、
人としての、深みに欠けてたり、
厚みがなかったりして、物足りなく感じると言っていた。
SM の世界に出入りしている人達は、
ある意味、SでもMでも、真面目で愚直で、不器用な人ばかり。
人は、頭では、理解しているように思っていても、
実際に体験してみないと、その意味は、
理解出来ない動物。
だから、何事も、実際に、自分で体験してみて、
いっぱい自分の身体で、感じてみることが大事だ、
と言った。
少し後から、店に入って来た、上久保ちゃんが、
「いやぁ、ママは、良いことを言うね~」
と、言ったかと思うと、
「若いって、いいねぇ~」
と、また早速、茶々を入れて来た。
年齢が若かったせいも、あるかも知れないが、
自分が、初体験を経験した女性と同じように、
自分を育ててくれようと、してくれていたみたいだった。
ママが昔、SMクラブで、女王様をしていた話は、
既にいろいろな人からも、話を聞いていたが、
自分が偏見なく、話をするせいか、
ママも、嫌な顔もせず、真摯に話をしてくれた。
一番最初に教わったことは、女性が男に惚れたら、
女性は誰でも、「その男に対しては、Mになる」
ということだった。
ママ曰く、それが、女性の本能らしい。
ママは、SもMも、どちらも、持っていて、
女王様になったのは、仕事としての側面もあったけど、
好きな男性にだけは、Mになるのだと言う。
女王様の、男性を威嚇するようなポーズも、
それは、営業スタイルのようなもので、
逆に、普段から肩を怒らせている人は、
弱い自分が見透かされるのを、
恐れている人だと言う。
そして、この上久保ちゃんは、
ママと同じように、SとMの両面がある男性で、
ママが女王様だったときに、
お客としてお店に来た人だと言う。
ママがそれを言うと、上久保ちゃんは、
まさか自分の話が持ち出されるとは、
思っても見なかったようで、
自分で、自分のオデコを 「ぺしん」 と叩くと、
「こりゃ、まいった」
と言って、一人、大笑いしてした。
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