2ntブログ
2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (9-3)

§9の3 また、一人増える

 

「祐さん、もう一本、いくでしょ?」 と、言うか言わないかの

タイミングで、もう、ビールの栓を開けているママ。

 

そうこうしていると、また、入り口のドアが開いた。

 

   「ママ、お店やってるの?

    表の店の看板、電気が点いてないよ?」

 

そう言うや否や、既にお客さんは、席に座ろうとしていた。

 

   「あらっ、上久保ちゃん!」

 

日曜日は、この店の定休日なのだが、

開いていると、入って来てしまうのが、

常連客の性(さが)のようだった。

 

   「もう、こうなったら、

    お店開けちゃうしかないわね・・・」

 

と、ママが言うと、

 

   「えっ??ママ、お店開いてたよ?」

 

と、ボケる客。

 

   「もう、今日は来る客、皆、変態ばかりね」

 

と、ママが言うと、

 

   「えっ??ママ、こちらの、お二人さんも?」

 

と言って、自分達の方を、覗き込む。

 

「そう」 と言って、こちらは、以前、親方のところで、

働いてた富ちゃんだけど、

上久保ちゃん、何回か、会ってない?

と、ママが聞くと、

どうやら、お互い、顔は見覚えがあるけれども、

今まで話したことが、ないらしい。

 

今日は、親方のところで、縄仕込みがあって、

こちらは、富ちゃんのお連れさん、と紹介されると、

 

   「今どきは、こんな若い子が、

    縛りをやるの? 世も末だね~」

 

とか、

 

   「縄跳びで、縛ってるの?」

 

などと、突っ込んで来たか、と思うと、

   「あっ、それは、オレか?」

 

みたいに、ひとりで、ボケを入れて来る。

 

どう反応したら良いのか、わからず、

戸惑いもあって、ひとまず、笑っていると、

 

   「この前、縛りを見せて貰ったけど、
    なかなかでしたよ」

と、若手が、助け舟を、出してくれた。

 

すると、年配の人が、


   「おう、若いの、吊りはやるのか?」

 

と、即座に反応する。

   「いえ、そこまでは、まだ・・・」

と言葉を濁すと、

 

若手は今、縄師に付いて、
吊りも含めて、「縛り」 を習っているのだという。

若手は、一緒に習いに行こうと、
誘ってくれたが、やはり学生は、
先立つものがないのでと、断わると、

 

じゃあ、ウチへ来て、練習すればいいと、
誘ってくれる。

すかさず、そこへママが、若い男二人なら、

   「わたし、受け手で、行っちゃおうかな?」

と言うと、上久保ちゃんが、

   「ママが行ったら、
    若い男二人、逆に縛られて、

    食べられちゃうから、

    気を付けないと」

と言って、大笑いする。

   「もう、わたしの邪魔したら、

    お尻をペシンするよ?!」

 

お店の中が、楽しい会話で、溢れていて、

同じ趣味の人が、集っているという、

安心感が、お店の中に漂っていた。

 

夜も更けて、

 

若手は、明日の朝が早いらしく、

自分も学校があるので、

幾らかお金を置いて、

帰ろうとするが、

 

ママは、どうしても、

お金を、受け取ってくれない。

 

ご馳走さまを言い、

 

   「また、来ます・・・」

 

と言うと、

 

若手と自分は、店を後にした。

 

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