【緊縛小説】 縄絡み (13-1)
§13の1 デレデレ
その後も、彼女とは、若手との吊りの練習で、
何事もなかったように、顔を合わせた。
駅への一緒の帰り道。
ポケットに入れた自分の腕に、
しがみつくようにして、勝手に
腕を通して、腕を組んでくると、
胸の膨らみを、腕に押し付けてくる。
一人陽気に振舞い、顔を覗き込んだり、
鼻歌を歌ったりしている。
「また、ホテル行く?」
と聞いてくるので、
明日は実験の日で、
準備しないといけないから、と断わると、
じゃあ、わたしが奢るから、
軽く、もう1軒行きましょう、と言う。
行き付けのカフェバーがある、
というので、電車で移動すると、
小洒落たネオンサインが、
店の窓や、壁に掛かっている
お店に入った。
フィル・フィリップスの
「Sea of Love」 みたいな、
50年代とか60年代とかの、
古いポップスが掛かっている
大人っぽい雰囲気の店だった。
ディスコには、行ったことはあるが、
こういう小洒落た店には、
今まで、来たことがなかった。
テーブルに座り、カクテルを注文する。
彼女は、小指を立てながら、
ロングカクテルを、ストローで、
何回か掻き混ぜると、一口飲んで、
「これから、曜日を決めて、
定期的に会わない?」
と、言った。
前回、置いてけぼりを食らって、いたので、
警戒して、返事を濁していると、
ラブホのお金も、出してあげるし、
「受け手」 になって、吊りの練習台にも
なってくれると言う。
黙って、返事をしないでいると、
小指を立てて、ストローをつまみ、
モスコミュールを飲みながらも、
テーブルの下では、
彼女の組んだ足の片方が、
自分の足の内側を
下から上へと、ゆっくり
這い上がってくる。
意を決して、
どうして、あのとき、自分を置いて
一人で行ったのかと聞いてみると、
彼女自身も、実は、朝起きて、
隣に寝ている自分を見つけて、
驚いたのだと言う。
縄で縛られると酔ったように、
ボーっとなるし、
生理前で、したくなってたのかも知れないけど、
会社に行かないといけないし、
その前にシャワーを浴びて、
着替えないといけないから、
気が動転していた、
と、彼女は言った。
彼女も、久し振りのセックスだった、
と言っていた。
仕事をしだすと、次の日があるので、
あまり、遊びに行く機会もなくなるし、
ママの店に、お手伝いに行って、
誘われたりすることは、あるけど、
お店のお客さんと遊んで、
噂をたてられたりしたら、
もうお店に、行けなくなってしまうので、
全部、断わっていたと言う。
自分は、ちょっと、複雑な気分だったので、
明確な返事は返さず、
週末の金曜日の、待ち合わせ場所と
時間だけを決めると、
お店を出た。
彼女が住んでいるのは、
どうも、此処の駅の近所らしく、彼女は、
「じゃあ、明後日の金曜日ね、
バイバイっ」
とだけ言うと、
1回も自分の方を振り向かず、
自分を置いて、
駅に向かう方向とは、反対の方に
歩いていった。
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