【緊縛小説】 縄絡み (12-2)
§12の2 ラブホ
若手の最寄り駅から、新宿の歌舞伎町までは、
結構距離があった。
普通は、タクシーなんかは、使わない距離である。
お姉さんに、「何処へ行くの?」 と聞いても、
怖い顔をしていて、全然、答えてくれない。
途中、ママの店に連れて行かれて、
焼きでも入れられるのかと、
半分、びびっていると、
それも通り過ぎて、運転手さんは、
夜で空いている街道を、新宿方面に
走らせて行く。
ガードを越えると、
明るいネオンが並んでいる。
お姉さんは、
花園神社の手前の角を
区役所方面に曲がり、
上っていった所で、
タクシーを止めると、
ぐいっと自分の手を
掴むと、引っ張るように、
ラブホに入っていった。
タクシーが、ママの店の辺りを
通り過ぎた時点で、
自分の心配は、ピークを超えたが、
まさか、行く先がラブホだったとは、
夢にも思わなかった。
むしろ、彼女の、
明日の仕事のことの方が
気になってしまっていた。
ラブホの入り口から、
ずっと、自分が悪かったと謝ったが、
彼女は、自分の手を放そうとしてくれない。
ラブホにチェックインし、
部屋に入ると、彼女は、自分の顔を見て、
「責任を取るわ」 と言うと、
服を全部、脱ぎだした。
鬼気迫っていた怖さは、いつの間にか、何処かに消え失せ、
潤んだ瞳には、絶望感だけが、漂っていた。
―――――――――――――――――
にほんブログ村 |
不倫のカタチ |
いつでも・・・初舞台 |
コメント