【緊縛小説】 縄絡み (12-5)
§12の5 ツンツン
しばらく寝入ってしまい、
気が付くと、彼女は、シャワーを浴びて、
服を着替え、帰り仕度をしているところだった。
時計を見ると、4時過ぎだった。
「何処に行くの?」
と聞くと、服を着替えないと、いけないから、
先に帰るけど、11時ぐらいまでは居られるから、
ゆっくり帰れば良いと言う。
自分は、と言えば、
それまで、ラブホに泊まった経験はなく、
昼間に何回か、休憩で使った程度である。
当時は、昼間でも、
休憩はだいたい、
どこも2時間とか長くて3時間。
今のように、フリータイム
のようなシステムは、なかったし、
夜の宿泊は、宿泊で、
結構な値段を取られたので、
当時、自分が使うと言えば、
もっぱら、「レンタルルーム」 だった。
明るい部屋を、見回してみると、
丸いベッドに、天井は鏡張りで、
しかも、ミラーボールが付いている。
こんなところに、置いて行かれても、
生きた心地がしないので、
自分も慌てて着替えると、
一緒にラブホを出て、
明るくなった歌舞伎町を、駅方面に
歩いて帰った。
しかし、
彼女の態度が、実に、素っ気無い。
一緒には歩いてくれないのだ。
自分の前を、彼女が歩いて、
自分はその後を付いて行く感じだ。
彼女の ヒールの音だけが、
朝の歌舞伎町にコダマする。
自分が路で、立ち止まっても、
彼女は、一切振り向かず、
コツコツと、ヒールの音を立てて
どんどん歩いて行く。
道端に出されたゴミに、
カラスが群がっている。
おしぼり屋と、ゴミ回収車が、巡回している中を、
ディスコで夜明かしをしたような連中が
フラフラと駅方面に漂っている。
結局、
彼女は、1回も振り向かずに、
交差点を渡って、見えなくなってしまった。
昨晩の出来事は、一体何だったんだろうか。
性欲は、満たせても、
心が、全然満たされない。
結局、
その日は落ち込んで、
学校の授業を全部さぼって
家で寝ていた。
「ニュートラ」 のお姉さんを、
思い出しては、しごいて、
そして、
出しては、空しくなる連続だった。
自己嫌悪と、自己否定だけが、
自分の中に残った。
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