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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (8-4)

§8の4 捉まる

 

縄の仕込みの作業も、一通り終わって、

一緒に片付けを手伝った。

 

後の作業は、お店の人が、

合間を見つけて、やるのだと言う。

 

お世話になった、親方や、年配の人に

あいさつをして、帰ろうとすると、

若手が、先ほどの女性に捉まっていた。

 

先に一人で、帰ろうとも思ったが、

それも気が引けた。

 

いろいろと、積もる話もあったが、

ほとんど作業ばかりで、

若手とは、あまり話す時間もなかったし、
又とない機会を作ってくれたのに、

お礼を言うのも、まだだった。

 

そして、それ以上に、いろいろと

聞きたいことも、山のようにあった。

 

 

しばらく、立ち尽くしていると、

若手が、こっちへ来いと、手招きをする。

 

どうやら、その女性は、

近所のスナックの、ママらしい。

 

親方が以前、良く、その店に、

出入りしていたこともあり、

自然と、緊縛好きの人達が、

集まる店に、なったそうだ。

 

若手も、まだ料亭に、

入り立ての時分に、何度か、

親方に、連れて来て貰ったことがあり、

ママにも、良くして貰ったらしい。

 

今日は、お店は休みだけれど、

久し振りに、「富ちゃん(仮名)」 と会えたので、

特別にお店で、ご馳走してくれるのだ、と言う。

 

ママが、若手の脇を抱えるように、

腕を組んで歩いて行くので、

仕方なく、二人の後を、付いて行った。

 

 

朝、来るときに、渡った橋を戻り、

駅の方に向かって、繁華街に出ると、

奥の、ちょっと、外れたところにある、

古目の感じの、

寂れた路地に入っていった。

 

ママが、入り口のシャッターの

鍵を開けようとするが、なかなか、

 

   <カッツン、カッツン>

 

という音ばかりで、

上手く開かない。

 

難航するシャッターに、

少し動揺しながらも、

格闘するママ。

 

お尻の大きさと、

腰のくびれのギャップが、

たまらない。

 

ようやく、

 

   <カッチャン!>

 

と言う音がすると、

若手が、勢い良く、シャッターを、

 

   <ガラガラガラーー>

 

と、持ち上げた。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (8-3)

§8の3 縄なめし

 

「毛羽(けば)焼き」 と聞いて、一緒に、外に出たは見たものの、良く良く考えてみると、当時の自分は、何が 「毛羽焼き」 なのかも、まだ、分かっていないので、もしかしたら、「手羽(てば)焼き」 と、聞き間違えて、いたかも知れない。

 

皆の後に付いて、一緒に外に出てみると、

ちょうど一人が、新聞紙を棒のようにしたものの先に、

コンロで、火を点つけているところだった。

 

火の点いた新聞紙を、

風に晒してあった縄の下に、もっていき、

縄に火を近づけると、

縄の下から、火が上に走るように、

ぱーっと燃え上がっていく。

 

火が走る度に、

 

   「おおおおっーーー」

 

という、歓声が沸いた。

 

毛羽を取るために、煮て、縄が緩んでいるときに、

火で、毛羽を焼いているらしい。

火の点いた新聞の筒を、上下に動かして、

縄の位置を少しずつ変えながら、一通り炙ると、

別の人が、それを交互に引っ張って、

ごしごしとしごいている。

 

「お前も手伝え」 みたいな感じで、年配の人から、

濡れ雑巾を渡される。

そのしごいた縄を下ろして、

雑巾で煤(すす)を拭(ぬぐ)う仕事だ。

 

年配の人は、コンロで白いものを溶かした液を、

ボウルに移すと、そこに油を入れて、掻き混ぜ始めた。

時間が経つと、だんだんと、透明な液が、

白いクリームのようなものになってきた。

 

拭った縄を、年配の人に渡すと、

年配の人は、乾いた雑巾に、そのクリームみたいなもの

を付けると、縄をごしごしと、しごいていく。

 

何をしているのか、聞いてみると、

油を入れているのだと言う。

 

料亭なので、「サラダ油か、何かですか?」 と聞くと、

 

   「これは、食べもんじゃなくて、

    人様の肌に触れるもんだから、

    そういう油を使うんでぃ・・・」

 

みたいに言われる。

 

そのまま完全に乾かしてしまうと、縄がカサカサになって

弱くなってしまうらしい。

どうやら、煮て抜いた、鉱物油の油分を、

その油で、補っているようだ。

 

本数が多いので、結構大変だった。

 

その作業が終わると、もう一度、縄を

物干竿に引っ掛けて、風に晒して、その日の作業は終了。

 

物干し台も、仕事で使った服や、布巾なども干すためか、

何段にも、竿が掛けれるようになっていて、

一番高いところは、3m くらいの高さがあった。

 

「巨人の星」 みたいに、

夕日で真っ赤になった空に、

まるで暖簾のように、

物干し台から、縄が吊るされて、

風に棚引いている様子は、

 

何処か厳かな、感じがした。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (8-2)

§8の2 縄宴

 

自分達も、その端っこに座ろうとすると、

お姉さん方が、もっと、こちらにいらっしゃいよと、

手招きする。

 

若手が、親方と目配せをして、移動し始めたので、

後を付いて行くと、親方も、自分に 「こっちに来い」

と、言わんばかりに、手招きをする。

 

親方のところへ行くと、「ご苦労さん」 と、

グラスを渡され、ビールが注がれる。

 

   「どうも、勉強になりました」

 

と言って、飲み干すと、お姉さん方と、

 

コイツが、人を連れてくると言うから、

どんなヤツを、連れて来るのかと、思ったら、

こんな若いのを、連れてくるんで、驚いたよと、

陽気に、笑いながら、

 

   「まあ、楽しんで、いってな」

 

と言って、また、勺をしてくれるので、

親方が持ってる、ビール瓶を受け取り、

親方のグラスに、ビールを注ぐと、

親方は、それを一気に、飲み干し、

お姉さん方と、また、話を始めたので、

 

  「よろしく、お願いします」

 

とだけ言って、その場を離れ、

若手が座った席の、はずれの方に、

移動した。

 

しばらくすると、

 

親方が、ひとりの女性を縛りだした。

初めて見た縛りだったが、

襷(たすき)縛りというものだった。

 

縛られているのは、

年齢は、まだ三十路前後の、

縄好きと目されていた女性。

当時流行りだった、

ニュートラを着こなしている、

ちょっとオシャレな子だった。

 

さきほど、外でいろいろと

教えてくれた年配の人が、

広間の鴨居のところに、縄を巻きだした。

 

若手は、これから多分、吊りをするのだろうと言う。

自分は、吊りを見るのは、このときが、初めてだった。

 

胸縄を縛り終わると、親方は、

女性の上半身を、

鴨居に巻いた吊り床に掛けると、

今度は、手際よく、慣れた手つきで、

腰縄から股縄を掛け始めた。

 

女性は、目も虚ろになり、

うとうとと、転寝をしているような、

何処かぼんやりとしている。

 

縛り終わり、

腰縄に吊り縄につけて、

女性の腰を、ひょいと持ち上げると、

また、手際よく吊り縄を纏めていく。

 

親方が、女性の耳元に顔を寄せ、

女性の髪の毛を、ゆっくりと撫でると、

 

女性の身体は、ビクン!

と一瞬震えたかと思うと、

ひっくひっくと、何回も痙攣を起こしていた。

 

   「あらぁ、もう縄酔いしちゃって・・・」

 

と言いながら、

 

お姉さん方のひとりが、

ビール瓶を持って、こちらの方の席に

詰め寄って来て、

 

   「富永くん、お久し振りね・・・

    お仕事は、順調?」

 

と言って、若手に、ビールを注ぐ。

 

若手が、いろいろ答えていると、お姉さんが、

 

どこで、こんな若い子、見つけて来たの?

「縛り」 をするの?

今度、わたしの 「縛り手」 になって、

もらおうかしら?

 

などと、若手に質問をしつつ、

自分の方を、ちらちらと、目配せしてくる。

 

若手は、自分に対して、

その度に、眉をひそめ、

小まめに首を横に振るような、

素振りを見せる。

 

前に一度、このサインの意味が分からず、

熱い思いをしたことがあったのを思い出した。

 

ちょうど、このとき、他の人達が、そろそろ、

「毛羽焼き」 の火入れをするか、と言って、

席を立ち始めたので、

 

若手に、「自分も、先に行ってます」

伝えると、親方にあいさつをして、

他の人達の後に付いて、

席を立った。

 

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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (8-1)

§8の1 縄仕込み

 

縄仕込みの当日。

 

都心に近い、各駅停車の駅で、

待ち合わせをしていると、

ほどなくして、若手が現れた。

 

若手の後を、付いて行くと、

 

駅前の繁華街からは、

少し離れたところにある、

旧家を思わせる、古い佇まいで、

しっかりと、手入れの行き届いた、

古い造りの、和風建築の

建物の前を、通り過ぎると、

 

裏手の、駐車場の脇にある

勝手口から、中に入っていった。

 

勝手口を入ると、

そこは、車が2~3台は

止まれそうな、中庭があり、

いくつかの倉庫が、並んでいて、

作業場のようになっている。

 

既に、何人かの人達が、表に

敷かれた、大きなガスコンロに、

寸胴鍋を載せ、そこにホースで、

水を張っている。

 

若手は、その中で、恰幅の良い、

入れ墨を入れた人のところに

行くと、少し話をすると、

こちらに来るようにと、

自分に、手招きをした。

 

どうやら、ここの店の、親方のようだ。

 

自分は、急いで、駆け寄り、

 

   「今日は、よろしく、お願いします。」

 

と、頭を下げると、「楽しんでいってな」 と、

一言だけ、言葉をもらった。

声が太いので、

 

   「ここで一番の若手は、お前だったのに、

    随分とまた、若いの、連れてきたな・・・」

 

みたいな話し声も、全て筒抜けだった。

 

そのとき、そこに居た、3~4人の人達は、

何かしらの作業をしていたので、

「手伝います」 と言うと、

そこに、切り置かれていた縄尻を、

紐で結んでおくように、言われた。

 

要領が分からず、まごついていると、

 

若手が自分に寄って来て、

仮留めだけど、縄を煮たり、

なめしているときに
外れない程度に、しっかりと、

結べばいいよ、といって、
見本を見せてくれた。

 

一緒に作業している人達は、

どうやら、昔、若手が此の店に、

お世話になっていたときの、

同僚のようで、作業をしながら、

いろいろと、積もり話を、

しているようだった。

 

縄に挟まった、麻の皮を取り、

縄を切り分け、

その切り口の部分を、

紐で縛ったものを、

お湯の中で煮て、

上から棒で、ずんずんとしごくと、

今度は、それを取り出して、

従業員用の洗濯機で、脱水し、

それを、物干竿に掛け、

庭の物干し台に、

掛ける作業の、繰り返しなのだが、

量が多いので、結構、骨が折れる。

 

この方法は、「煮なめし」 という

方法だそうで、麻縄を縒るときに

使われる、鉱物油を抜いて、

縄を柔らかく、するのだという。

 

昔は、「泥なめし」 と言って、

店に来る途中に渡った川の、

河原の泥に浸けておくと、

泥の中の微生物が、勝手に、

麻縄に付着している、鉱物油を、

分解してくれたらしい。

これを、川の水に、晒し置く、

だけだったので、

時間は掛かったけど、

昔の方が、楽だったと、

年配の人が、教えてくれた。

 

お昼前頃になると、

 

   「おはようございます~」

 

と言って、和装の女性や、

濃い目の化粧の女性の人達が、

勝手口の木戸を通って、

次々と入ってきた。

 

以前、仲居を務めていた女や、

自分と同じように、縄好きで呼ばれて、
居ついた女性の姿も、あったようだが、

多くは、行き付けの、近所の飲み屋

の女性だと、言っていた。

 

かなりの量の差し入れを、持って来る、

女性もいたので、それを運ぶお手伝いで、

何人かが、居なくなったり、

親方に呼ばれて、借り出される人達も居て、

結局、外に残っているのは、

若手と自分だけになった。

 

一通り、作業を終えると、後片付けをして、

中に入って行くと、手土産の差し入れを肴に、

広間では、既に、宴会が始まっていた。

 

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