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2018/05/10

【緊縛小説】 縄絡み (8-2)

§8の2 縄宴

 

自分達も、その端っこに座ろうとすると、

お姉さん方が、もっと、こちらにいらっしゃいよと、

手招きする。

 

若手が、親方と目配せをして、移動し始めたので、

後を付いて行くと、親方も、自分に 「こっちに来い」

と、言わんばかりに、手招きをする。

 

親方のところへ行くと、「ご苦労さん」 と、

グラスを渡され、ビールが注がれる。

 

   「どうも、勉強になりました」

 

と言って、飲み干すと、お姉さん方と、

 

コイツが、人を連れてくると言うから、

どんなヤツを、連れて来るのかと、思ったら、

こんな若いのを、連れてくるんで、驚いたよと、

陽気に、笑いながら、

 

   「まあ、楽しんで、いってな」

 

と言って、また、勺をしてくれるので、

親方が持ってる、ビール瓶を受け取り、

親方のグラスに、ビールを注ぐと、

親方は、それを一気に、飲み干し、

お姉さん方と、また、話を始めたので、

 

  「よろしく、お願いします」

 

とだけ言って、その場を離れ、

若手が座った席の、はずれの方に、

移動した。

 

しばらくすると、

 

親方が、ひとりの女性を縛りだした。

初めて見た縛りだったが、

襷(たすき)縛りというものだった。

 

縛られているのは、

年齢は、まだ三十路前後の、

縄好きと目されていた女性。

当時流行りだった、

ニュートラを着こなしている、

ちょっとオシャレな子だった。

 

さきほど、外でいろいろと

教えてくれた年配の人が、

広間の鴨居のところに、縄を巻きだした。

 

若手は、これから多分、吊りをするのだろうと言う。

自分は、吊りを見るのは、このときが、初めてだった。

 

胸縄を縛り終わると、親方は、

女性の上半身を、

鴨居に巻いた吊り床に掛けると、

今度は、手際よく、慣れた手つきで、

腰縄から股縄を掛け始めた。

 

女性は、目も虚ろになり、

うとうとと、転寝をしているような、

何処かぼんやりとしている。

 

縛り終わり、

腰縄に吊り縄につけて、

女性の腰を、ひょいと持ち上げると、

また、手際よく吊り縄を纏めていく。

 

親方が、女性の耳元に顔を寄せ、

女性の髪の毛を、ゆっくりと撫でると、

 

女性の身体は、ビクン!

と一瞬震えたかと思うと、

ひっくひっくと、何回も痙攣を起こしていた。

 

   「あらぁ、もう縄酔いしちゃって・・・」

 

と言いながら、

 

お姉さん方のひとりが、

ビール瓶を持って、こちらの方の席に

詰め寄って来て、

 

   「富永くん、お久し振りね・・・

    お仕事は、順調?」

 

と言って、若手に、ビールを注ぐ。

 

若手が、いろいろ答えていると、お姉さんが、

 

どこで、こんな若い子、見つけて来たの?

「縛り」 をするの?

今度、わたしの 「縛り手」 になって、

もらおうかしら?

 

などと、若手に質問をしつつ、

自分の方を、ちらちらと、目配せしてくる。

 

若手は、自分に対して、

その度に、眉をひそめ、

小まめに首を横に振るような、

素振りを見せる。

 

前に一度、このサインの意味が分からず、

熱い思いをしたことがあったのを思い出した。

 

ちょうど、このとき、他の人達が、そろそろ、

「毛羽焼き」 の火入れをするか、と言って、

席を立ち始めたので、

 

若手に、「自分も、先に行ってます」

伝えると、親方にあいさつをして、

他の人達の後に付いて、

席を立った。

 

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