2ntブログ
2019/06/26

「くすぐり」とSM(2)

昨日の 「『くすぐり』 とSM」 の記事の続きです。

 

昨日の記事では、「くすぐり」 による笑いが、原始的な脳とも呼ばれる 「大脳辺縁系」、その中でもかなり深い部分にある 「視床」 という部分で処理され、そこから大脳皮質の感覚野に伸びたところで 「笑い」 と結び付けられていること。

そして、ヒトの男性が放つ性フェロモンの可能性が高い 「アンデロステノン」 に対する女性の官能試験の反応は実は、「くすぐり」 に対する笑いと似たような関係にあるのではないかという仮説を立ててみました。

 

そして、昨日の記事への補足ですが、昨日の記事の要約をここまで書いていて、実は、やはり脳の深いところであるだけに何等かの 「ホルモン」 も関与しているのではないかという思いに駆られました。

と言うのも、体性感覚は 「視床」 という部位に入っていますが、ホルモン分泌は 「視床」 に隣接する 「視床下部」 が司令塔を担っているためです。

 

 

そこで早速調べてみたところ、「くすぐり」 に対しては、前頭皮質と海馬における 「セロトニン」 が活性化されているらしいことが解りました。

 

「『くすぐったい』感覚の脳内情報処理機構の解明」

「補完代替医療としての笑い - J-Stage」

 

「くすぐり」 に対して 「笑い」 を返す行動の意味は、まだ十分には解っていません。

しかし、「笑い」 が精神衛生的にも良く、良好な人間関係を構築する上でも大きく寄与していることは広く知られています。

 

また、ヒトの場合も同じですが、人がくすぐる仕草に対しても、ネズミが 「笑う」 反応を示したというのは驚きでした。


「くすぐり」 がネズミにとっても、一種の 「遊び感覚」 なのか分かりませんが、「くすぐられたねずみは、もっとくすぐって欲しいといわんばかりに、くすぐる手に近寄ってきて、笑いながらその手を高速で追いかけて遊ぶ」 というのですから、明らかに興奮状態にあることは間違いないようです。

 

当初は、「危険」 を表すシグナルを受け、身体は 「危険」 に対応するために否応なく 「緊張」 するものの、大脳皮質が 「安全」 であることを確認し、その身体の緊張を緩和するために 「笑い」 を発生させているのかも知れません。その笑いは、「安堵」 の 「笑い」 かも知れませんが、ネズミが、その刺激が親しい人による 「フェイク」 であることを認識した後、人がくすぐる仕草を示したとき、ネズミはそのひとの意図を感じ取り、「遊び」 と認識したのかも知れません。

 

 

くすぐりフェチ

 

くすぐられると、「笑い」 は漏れ出るものの、身体は明らかにその刺激から逃げようとしますし、その刺激は、あまり 「心地良い」 ものではありません。

しかし、くすぐられて 「笑い」 が漏れるためには、「くすぐる人」 と 「くすぐられる人」 が 「親しい関係」 にあることが求められるためか、くすぐられて笑う行為を、「性愛」 に結び付けて認識する人達もいるようです。

 

そのような、「くすぐり行為」 に対して 「フェティシズム」 を覚える人達は、一般的には、「くすぐりフェチ(Tickling Fetishism)」 と呼ばれているようですが、これも 「くすぐり方(Tickler)」 と 「くすぐられ方(Ticklee)」 で 「性的倒錯(paraphilia)」 上の分類も異なるのか、「くすぐりフェチ」 は、「ティティラグニア(Titillagnia)」、「くすぐられフェチ」 は、「ニスモラグニア(Knismolagnia)」 と呼ばれるのだそうです。

 

「Tickling Fetishism Explored」

 

このような 「くすぐりフェチ」 を見てみると、女性を拘束した上でくすぐる場合も多いようですが、拘束は必ずしも必須ではなさそうです。

また、「くすぐり責め(Ticling Torture)」 のように、多生 「SM 色」 を煽った表現もあるようです。

 

 

刑罰としての 「くすぐり」

 

この刑罰としての 「くすぐり」 は、当初は疑念を感じていましたが、いろいろと調べると江戸時代の取り調べ時の拷問や刑罰といった類のものではなく、吉原などの遊郭で女郎が逃げようとしたり、粗相をした際の 「私刑」 として行われたという説が有力です。

 

「くすぐり責め - 私立拷問電脳図書館」

 

この私立拷問電脳図書館の記事によると、この著者は 「日本拷問刑罰史」 という書籍を引用していますが、

“吉田町の夜鷹宿やメッタ町の比丘尼長屋では、縛って鳥の羽でくすぐるというくすぐり責めが私刑として行われていた”

という記述が見られます。

 

この書籍の著者名が書かれていないので、特定は出来ませんが、コチラの本なのでしょうか。

 

 

江戸時代、幕府が定めた公娼(公認の遊郭)は、江戸の吉原、京都の島原。そして大阪の新町遊郭が三大遊郭と呼ばれますが、これ以外にも全国で20数ヶ所にものぼる遊郭があったそうです。

しかし、ここで言われている夜鷹とは 「立ちんぼ」 のことで、「比丘尼(びくに)」 と呼ばれているのは、尼僧の姿をした私娼のこと。

公娼である遊郭は、堀に囲まれ、門を通過しないと外に出られないなど、簡単には抜け出せないような場所でしたが、私娼ともなると、まだ逃げること自体は、たやすかったのかもしれません。
 

そして、「くすぐり責め」 という私刑を与えたのは、殴る蹴るといった行為は、その女性の商品としての価値を落としてしまいかねないためだったそうで、「くすぐり責め」 以外の刑としては、「とうがらし責め」 というのがあり、拘束して身動き出来ない女性に、とうがらしをいぶした煙を浴びせたようです。

これなどは、今で言うと、痴漢撃退用の 「催涙スプレー」 を掛けられているようなものですから、やはりたまりません。

 

「くすぐり責め」 では、“鳥の羽” を使っているというのは実に面白いところです。

ちなみに、「くすぐりフェチ」 の中には、鳥の羽を使うことにこだわる人達もいるようなのです。

 

どなたか、くすぐらせて貰えますか?(笑)

 

(つづく)

 

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