【緊縛小説】 縄絡み (4-3)
§4の3 職人の性癖
若手によると、
話の内容は、
こんな感じだった。
自分と同じような経験は、
程度の差こそあれ、
今までにも、何人ものアルバイトが、
経験している、ということ。
職人は、
アルバイトで、
自分の気に入った、
若い男を見つけると、
「鑑賞会」 と称しては、
家に来るように、
声を掛けているらしく、
若手も、会社に入りたて、の頃、
誘われたそうだ。
どうやら、職人は、
「美人の奥さん」 が、
自慢で仕方なく、
奥さんを、見せびらかしたいようで、
奥さんの方も、
満更ではないのか、
どうやら、二人でそれを、
楽しんでいるらしく、
奥さんも、あったこと全てを、
詳(つまび)らかに、
職人に報告している、
らしかった。
そもそも、若手が、
自分の話を知ったのも、
職人が仕事場で、
そういった話を、
面白可笑しく、若手に話すのが、
日課となっていたから、だそうだ。
若手が、職人から聞いた話では、
自分のモ☆ノが、普通よりも、大きかったことと、
若いのに、セックスが上手だったこと。
あとは、
いきなり縛られて驚いたことと、
いつもとは違う、気持ち良さを、
感じたこともあって、
怖くなった、ということだった。
当時は、”そういう人達” の存在を、知らなかったが、今で言うと、二人は、「NTR」 系の人達だったのかも、知れない。
職人が、「寝取らせ」 だったのか、それとも、「寝取られ」 だったのかは、今となっては、もう、それを知る由もないが、しかし、職人の奥さんの、美貌と品の良さは、以前、銀座のクラブで働いていた、と聞けば、誰もが納得するほど、レベルが高かったので、職人が、見せびらかしたくなる気持ちも、分からなくはなかったし、奥さんは奥さんで、あれだけの美貌で、肉感的な女性なので、若いツバメを食べるのが好きだったとしても、決して不思議ではなかった。
そして、一通りの事の顛末を、
教えてくれると、
若手は最後に、ポツリと一言、
「俺も今、師匠に付いて、
縛りを習ってるんだ・・・」
と、自らの性癖を、告白した。
<なんてこった・・・>
どうやら、今までの
職人との会話は、単なる前置きに過ぎず、
要は、若手は単に、
「同じ趣味だから、仲良くしたい」
ということを、言いたかっただけ、
のようだった。
***
そこの店は、
若手のツケが利く、
そうなので、
ご馳走になった。
店を出ると、若手は、
まだ時間も早かったので、
「良かったら、これから、
ウチの部屋に来る?」
と言って、自分を家に誘った。
話を聞くまでは、
トラブルばかりを
想像していて、
全くと言っていいほど、
生きた心地がしなかった、
自分にとっては、
どんなお誘いも、
心地良いものだった。
「はい・・・」
当時は、バイクを駅前に、留めておいても、滅多なことでは、切符を切られない、時代だった。
バイクを、そのまま放置すると、
もう、日が短くなった、
まだ早い時間の夜道を、
若手に付いて、歩いて行った。
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