【緊縛小説】 縄絡み (4-1)
§4の1 電話
職人の家で、
奥さんと交えた日。
実は、
二回戦目に
突入したあたりから、
奥さんの、自分を見る目が、
何処か悲しげで、
そして、
自分に対する態度が、
何処か余所余所しく
なったような、
そんな気がしていた。
「また、逢いたい・・・」
と何度言っても、
何処か上の空だったり、
話を、すり替えかえられたり。
結局、あの日は、
次に逢う約束を、
取り付けることが出来ず、
すごすごと、
帰って来たのだった。
あの日のことを、思い出しては、
<いきなり縛ったので、
怖がらせちゃったかな?>
などと、反省しきりの日々を、
過ごしていると、
あるとき、
職人と一緒にいた、若手から、
家に、一本の電話が入った。
電話を受けたときは、
既に、名前すら、全く覚えておらず、
誰なのかさえも、検討が付かない。
おそるおそる、
電話に出てみると、
職人と仕事を組んでいた、
例の若手だった。
どのような用事かを、聞いてみると、
若手は、電話口で、いきなり、
「親方の奥さんと、したんだって?」
と聞いて来た。
<こんなことは、あるはずがない!>
奥さんが自ら、「浮気しました・・・」 と、
職人に告げる筈もない。
いやいや、それ以前の話として、
そもそも何故。
何故、若手が、「そのこと」 を、
知っているのか。
様々な疑念が、瞬時に
自分の、頭の中を過(よ)ぎっては消え、
返事すら、出来ないでいると、
若手は一言、
「だから、あのとき、やめとけ・・・
ってサインを出したじゃん。」
と言って、ため息をついた。
全く話の意味が、理解出来ず、
沈黙を続けていると、
電話では、説明が難しいからと、
外で直接会って話す、ことになり、
若手が住んでいる
最寄駅の駅前で、
待ち合わせすることになった。
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