【緊縛小説】 縄絡み (1-5)
§1の5 電話を掛ける
トゥルルルル・・・、トゥルルルル・・・ カチャッ
「はいっ、柴崎(仮名)で、ございます・・・」
電話に出たのは、職人ではなく、
声に、深い響きと、艶のある、女性だった。
「すみません、親方、いらっしゃいますか?」
「どちらさまですか?」
「アルバイトでお世話になっている、緒尾と申します。」
「少々、お待ち下さい・・・、(アナターー、バイトさん!)」
しばらくして、電話が変わる。
「おうっ、あの学生だな・・・
仕事、探してるのか?」
「例のビデオの件で、お電話しました。」
「そうか、相談ごとか。それは面倒だな。
それなら、部屋を移るから、ちょっと待ってな・・・」
まだ、ワイヤレスとか、親機子機といった電話機がない時代だった。
ガサゴソと、職人が、電話機ごと、部屋を移動する音がする。
男の話に、四方山話(よもやまばなし)はない。会話は、用件のみ。
しかし、職人のことを、勝手に 「男やもめ」 と、決め付けていただけに、
女性が電話に出るとは、思いも寄らなかった。
結局、話は、一回の電話では、纏まらず、
何回か、連絡を取り合い、
翌週の土曜日の夕方に、お邪魔することになった。
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