2ntブログ
2018/04/09

【緊縛小説】 縄始め (3-1)

§3の1 忘れ物

 

そのあくる日。バイクの鍵が、何処を探しても見つからない。

 

   <もしかして、あの女性の家か?>

 

当時は、洒落たキーケースなんかは持っておらず、

鍵にキーホルダーなんかを付けて、裸のまま、持ち歩いていた。

 

気持ち良かったけれども、不潔感いっぱいで、

昨日は、もう、金輪際、「近付くのは、やめよう・・・」 と思っていたものの、

一日過ぎてみると、また、もう一回、あの気持ち良さに浸りたくなる。

 

とりあえず、鍵を忘れなかったか、確認したくて、

女性の家の、ベルを鳴らす。

インターフォンから、彼女の声が聞こえた。

 

   「どちらさまですか?」

 

   「○○○号室の、緒尾です。」

 

ガチャっと、ドアが開く。

 

女性は、自分の顔を見るや否や、微笑みを返す。

口には出さないまでも、顔が、

 

   「あらまあ、もう早速? 若いっていいわねー」

 

と言っているようだった。

 

   「昨日忘れ物しなかったか、確認したくて・・・」

 

   「まあ、立ち話も何ですから、どうぞ中へ、お入りください。」

 

近所の目もあるのか、手招きされ、

そそくさと、玄関の中に入れてもらった。

 

バイクの鍵を忘れていなかったかを確認すると、

話も余所に、彼女は居間に戻ると、

「これよね?」 と言って、鍵を持って駆け戻って来た。

 

居間のソファーの下に落ちていたので、

あとで郵便受けにでも、戻しに行こうと思っていたらしい。

ご主人は、帰りは夜になるとのこと。

 

忘れ物の場合もそうだけど、お互いの連絡方法を、きちんと決めておこう、

ということになり、そのまま、また、女性のお家にお邪魔することになった。

 

当時は、今のように携帯電話などなく、

電話と言えば、家の固定電話だけ。

しかも、会話は、家の人に筒抜けなので、

電話で連絡を取るなんて言うのは、まず不可能。

 

結局、「郵便受け」 と言うのがキーワードになり、

用事があるときは、文房具屋で売ってる 「ステッカー」 を、

相手の 「郵便受け」 の隅に張ることになった。

 

   「ちょっと待ってね、お湯を沸かすわ・・・」

 

キッチンから戻ってくると、自分に抱きついて来て、唇を重ねてくる。

 

   「イイ、お○ん○ん、持ってるんだし、

    これから、”凄い男” になれるように、仕込んであげるからね・・・」

 

と言いながら、股間を掴んでくる。

 

   「もう、こんなになっているわよ?」

 

忘れ物を取りに来ただけなのに、また、組(く)んず解(ほぐ)れつの状態に

なって、お互いを貪り合った。

 

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