【緊縛小説】 縄始め (3-1)
§3の1 忘れ物
そのあくる日。バイクの鍵が、何処を探しても見つからない。
<もしかして、あの女性の家か?>
当時は、洒落たキーケースなんかは持っておらず、
鍵にキーホルダーなんかを付けて、裸のまま、持ち歩いていた。
気持ち良かったけれども、不潔感いっぱいで、
昨日は、もう、金輪際、「近付くのは、やめよう・・・」 と思っていたものの、
一日過ぎてみると、また、もう一回、あの気持ち良さに浸りたくなる。
とりあえず、鍵を忘れなかったか、確認したくて、
女性の家の、ベルを鳴らす。
インターフォンから、彼女の声が聞こえた。
「どちらさまですか?」
「○○○号室の、緒尾です。」
ガチャっと、ドアが開く。
女性は、自分の顔を見るや否や、微笑みを返す。
口には出さないまでも、顔が、
「あらまあ、もう早速? 若いっていいわねー」
と言っているようだった。
「昨日忘れ物しなかったか、確認したくて・・・」
「まあ、立ち話も何ですから、どうぞ中へ、お入りください。」
近所の目もあるのか、手招きされ、
そそくさと、玄関の中に入れてもらった。
バイクの鍵を忘れていなかったかを確認すると、
話も余所に、彼女は居間に戻ると、
「これよね?」 と言って、鍵を持って駆け戻って来た。
居間のソファーの下に落ちていたので、
あとで郵便受けにでも、戻しに行こうと思っていたらしい。
ご主人は、帰りは夜になるとのこと。
忘れ物の場合もそうだけど、お互いの連絡方法を、きちんと決めておこう、
ということになり、そのまま、また、女性のお家にお邪魔することになった。
当時は、今のように携帯電話などなく、
電話と言えば、家の固定電話だけ。
しかも、会話は、家の人に筒抜けなので、
電話で連絡を取るなんて言うのは、まず不可能。
結局、「郵便受け」 と言うのがキーワードになり、
用事があるときは、文房具屋で売ってる 「ステッカー」 を、
相手の 「郵便受け」 の隅に張ることになった。
「ちょっと待ってね、お湯を沸かすわ・・・」
キッチンから戻ってくると、自分に抱きついて来て、唇を重ねてくる。
「イイ、お○ん○ん、持ってるんだし、
これから、”凄い男” になれるように、仕込んであげるからね・・・」
と言いながら、股間を掴んでくる。
「もう、こんなになっているわよ?」
忘れ物を取りに来ただけなのに、また、組(く)んず解(ほぐ)れつの状態に
なって、お互いを貪り合った。
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