SM におけるリスク回避について(2)
前回の記事 「SM におけるリスク回避について」 では、緊縛事故の回避を中心に説明しましたが、SM におけるリスク回避は、こればかりでは足りません。
SM においては、責める技術もさることながら、イザと言うときの対応こそが大切なのです。
プレイで、どんなに強がり、吠えていたとしても、いざアクシデントに直面したときに、他人のせいにして、自分はさっさと尻尾を巻いて逃げてしまうようなヘタレ男には、女性は怖くて自分の身を委ねられません。
緊縛に限らず、特に気をつける必要があるのが、「呼吸」 です。
かなり古いツイートではありますが、やはり、これが一番 「言(い)いえて妙(みょう)」 でしょう。
青山夏樹@natsukiss1018縛ってて、責めてて過呼吸が起きる? 過呼吸にさせないようにしなよ。 下手糞か。 相手をしっかり見てたらわかるだろ。 起きかけたら戻してやりなよ。 どうやって戻すのか? そんなことも出来ない奴が 自分だったら耐えられない様なことを他人にするなよ。
2015年05月25日 08:38
1.過呼吸
過呼吸を起こすのは、もともと 「パニック障害」 などを起こしやすい人である場合もありますが、そうでなくても、極度の緊張や興奮といったストレスで引き起こされる場合があります。
では、放っておくとどうなるか?自分は放置した経験はありませんが、まあ、失神するのがオチです。
「受け手」 が過呼吸になった経験は何度かあります。
過呼吸の 「ハッハッ」 を興奮の 「ハアハア」 と勘違いし、放っておいたあげく、女を失神させたと喜んでいる男がいたとしたら、あまりにも痛くて、苦笑せざるを得ません。(笑)
「縛り手」 であれ 「責め手」 であれ、相手の自由を奪い、「受け手」 は全てを委ねているわけですから、夏樹嬢の言うとおり、「縛り手」 や 「責め手」 が戻してあげなければいけません。
彼女の言っていることは正論です。
過呼吸で怖いのは、それに気付かないまま、「受け手」 が 「失神」 したり 「卒倒」 してしまうことです。
立っている状態であれば、全く受身が効かないまま、倒れることになりますので、頭部や顔面その他に大きな怪我を負いかねないということ。
また、失神すると、自分で意識的に体勢を維持出来ませんので、気が付かないまま、首を圧迫していたり、呼吸が困難な状況におかれたりする場合があり得るということです。
ちなみに、「受け手」 が過呼吸を起こし始めた場合。自分で抑えられるか、しばらくは様子を見ていますが、呼吸がエスカレートしていく場合は、しっかりと 「受け手」 の身体を支えるか、あるいは、安全な体勢にして、相手の口と鼻を片手で同時に覆(おお)います。
傍(はた)から見ると、縛られた女性の背後から、片手で喉(のど)を掴み、もう一方の手で、口と鼻を押さえてるように見えるので、「なんて、サディスティックなやつだ!」 と思われるかも知れませんが、口と鼻に関しては、手を被(かぶ)せている程度で、そんなに呼吸できないほど、強く押さえているわけではありません。
背後に立つのは、女性を完全に受けれるのと、女性が安心するためですが、吐瀉物(としゃぶつ)があったり、むせたりする場合は、前傾姿勢を取らせる必要があります。
2.失神
これも何度か経験していますが、失神の場合は、過呼吸のような前段の症状が見られないので、厄介です。大切なことは、まず転倒による怪我を防ぐこと。続いて、縄や手枷・足枷(あしかせ)・口枷の類は全て外(はず)すと同時に、気道を確保し、脈と呼吸の有無を確認します。口の中に異物がある場合には、それを取り除きます。口から泡(あぶく)を吹いている場合は、唾液(だえき)ですので、全部垂(た)らし流して、気道を確保します。
ほとんどの場合は、普通の 「失神」 ですので、脈も呼吸もあります。その場合は、「受け手」 を座らせて、背中に自分の膝(ひざ)を当てて、両肩を手前に引くようにして 「活」 を入れると、大抵の場合は、回復します。
しかし、活を入れても意識が戻らない場合や、それ以前に身体に硬直等が見られるときは、頭部の打撲や持病の可能性があるので、脈や呼吸がない場合も同様ですが、即、救急車を呼びます。
本来であれば、無呼吸時の人工呼吸、呼吸・脈拍がない場合の心肺蘇生も身に付けたいところですが、そこまででなくても、「やりすぎでは?」 と考える人は、いざそのような場面に出くわしたときに、どのような行動に出るかを想像してみて下さい。
「受け手」 の方は、次第に気が薄れて行き、気が付いたら 「ここは何処?」 の世界ですが、実は大切なのは、本人が気を失っていた間に、相方がどういう行動を取っていたのか・・・なのです。
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また、SM におけるリスクを回避するためには、個々の 「責め」 自体や、あるいは、その責めで使用する 「道具」 や 「責め具」 に内在するリスクをきちんと認識することも大事です。
3.火事
ロウソクを扱う場合、まず、このリスクを忘れ去ってはいけません。多くの事故は、ロウを垂らした後、火をつけた状態で立たせていたはずのロウソクが、何かの弾(はず)みで倒れたり、あるいは、ちょっと横に置いたまま忘れてしまったり、と言うもの。ロウソクを手放した途端、ロウソクのことが、もう頭の片隅から消えてしまっていることで起こっているものです。
あとは多いのが、一人 SM での事故です。拘束された状態でロウソクを垂らされる状況を、自分で作っているときに、何かの拍子(ひょうし)にロウソクが倒れたりして、火災になり、焼死するケースです。
1年ほど前にも、ニュースで、こんなのがありました。
「どこどこで何時頃、火事が発生し全焼。火元と見られる部屋からは拘束された状態の焼死体が発見されました。○○署は、その場の状況から事故の線で捜査中・・・」
みたいな内容です。この手のニュースは、聞いていて違和感を覚えるのですが、通常であれば、「事故と事件の両面から・・・」 あるいは 「事故と自殺の両面から・・・」 となるはずのところが、「事故の線で・・・」 と特定されてしまっているあたり。
被害者の名誉を考えての表現なのでしょうが、拘束された状態での焼死を事故と断定できるだけの材料が見つかっており、被害者には被虐性向があり、その状況から、変態的な自慰であることが明らかな場合に限定されることでしょう。
もしかしたら本人は、期待している以上の快感を得ることが出来たかも知れませんが、しかし、残された家族は、居(い)た堪(たま)れたもんじゃありません。
ロウソクなどの火を使う 「熱い系」 や、呼吸を制限する 「苦しい系」 が好きな ドM くんは、お金をケチろうなんて思わず、迷わず、SM クラブなり SM サロンに駆け込んで下さい。
自分も、ロウソクを使うときは、常にロウソクを手から離す場合は火を消す習慣をつけている他、自分の注意力が散漫になるような状況下では、ロウソクはやらないようにしています。
4.感染症
アナ☆調教の場合は、浣腸を施した後、洗浄するほか、器具や指を使う場合は、自分の 「利(き)き手(て)」 とは逆の手指を使ったりして、後ろをいじった手で、絶対に前に触れないようにします。
これは、女性の身体の構造上、尿道から膀胱(ぼうこう)までの距離が短く、大腸菌等が膀胱に侵入して膀胱炎を起こしやすいためです。
また、汚れた指で膣をいじれば、通常の膣内は粘液や膣内に常在している乳酸菌によって酸性が保たれていますが、排卵周期などでアルカリ性に偏(かたよ)ると、それだけ雑菌が繁殖しやすくなり、膣炎を起こしやすくなります。
アナ☆プレイに慣れている人達であっても、完全に防ぐことは難しく、このため、アナ☆プレイの好きな人は、処方薬の抗菌剤を常に準備している人もいたりするほどです。
ちなみに、アナ☆調教やアナ☆プレイに絡む事故は、感染症などは序の口で、アナ☆プレイの知識や経験のない人に無理やりされたことによって、裂傷を負ったり、腸管を傷付けてしまったりするトラブルもあります。腸は温度にも刺激にも大変敏感な器官であるだけでなく、腸壁から吸収やアレルギー等も考慮する必要がありますので、無知なプレイは命取りになります。
アルコールを浣腸し、急性アルコール中毒を起こして中毒死させてしまった事件などもあります。
「21歳の体内に液体注入して急性中毒死、男に懲役16年 『人としての尊厳を軽視』」
5.電動系おもちゃ使用による神経障害
これもあまり多くの人は知りませんが、モーターに鉛の錘(おもり)が付いただけの、昔ながらのローターくらいの緩(ゆる)い刺激ならともかく、最近の強い刺激の 「ローター」 や 「電マ」 は、どんどん女性の身体の感度を鈍(にぶ)くするということです。
イキづらい女性にとっては、これらのおもちゃは、手っ取り早く気持ちよくなる手段でもあります。しかし、使いすぎると、普通の刺激ではどんどん、イキづらくしているようなものです。
では、どういう理由でイキづらくなるのか? スッキリと答えている人を見かけないのですが、これは、抹消循環障害や抹消神経障害といった 「振動障害」 です。振動障害とは、チェーンソーやハンドハンマーなど、常時強い振動を受ける工具を使用する職種の人に見られる職業病の一種ですが、これと同じことが、おもちゃの使用部分で起きるわけです。
ですので、強い刺激に慣れていない人に対して用いた場合は、触覚などの知覚の麻痺を起こしたりすることがあります。
男性の中にも、「電マ神話」 的な思い込みのある人を結構見つけますが、刺激が強ければ強いほど良いというものではありません。女性に言わせれば 「電マ」 で得られる快感は、人で得られる快感とは異質だと言います。
それもそうでしょう。男性だって風俗では、女性との触れ合いが多い行為の方に、多額のお金を支払っているのです。刺激が強いだけで 「満足」 するのであれば、とっくに男性用の 「電マヘルス」 みたいのが林立しているはずです。(苦笑)
軽度な症状であれば、一定期間その刺激を断つことで回復しますが、何度も繰り返しているうちに、人間の身体には耐性が出来てきます。
ちなみに、自分もローターや電マは持ってはいますが、自分が使うのは、おもちゃを使った経験のない人に対しては、背徳的な雰囲気を高める意味で使用したり、あとは、言うことを聞かないワガママな奴隷に対して、「お前みたいなのは、オモチャでイってろ」 的に 「罰」 として使用するのが大半ですが、多様はしません。
女性の身体とは不思議なもんで、一旦スイッチが入ってしまえば、指一本、あるいは、喰い込んだ股縄の擦(こす)れだけでも、イってしまうのです。
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SM に対して憧憬(どうけい)の念を抱いている読者には、「興醒(きょうざ)め」 する内容ばかりですが、「縛り手」 「責め手」 と称される S は、常に加虐性欲に突き動かされて、M を貪(むさぼ)っているのではなく、常にこういったリスクを念頭に、冷静に対応しているということ。
逆に言うと、これらのリスクが全く頭の中にない人は、知識も経験もない、自分の 「願望」 を達成したいだけ、もっと簡単に言うと 「やりたい」 だけの 「自称ドS」 に過ぎないということです。
鬼畜あるいはオラオラ的なシチュエーションに萌える ドM 女性もたまに居りますが、それは単なるプレイの趣向に過ぎません。表面的な趣向で相手選びをしていると、痛い思いをしかねません。
初心者のみなさんの参考にでもなれば、光栄です。
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