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2019/05/22

縁縄と縄縁(2)- 偶然の出会い

2.偶然の出会い

 

それはいきなりでした

 

彼女の方から

その日の朝に

 

――今日逢いたい

 

という連絡が入りました

 

連絡が入っていることに気が付いたのは

用事があって

出掛けている最中のこと

 

本人も

まさか 「当日」 いきなりの連絡で

「当日」 に会えるとは期待すら

していなかったことでしょう

 

「ダメ元」 で送ったであろう

彼女のメッセージに

どう返事を返そうか

悩んでいる

まさかそのときに

 

そんな二人が

実は 同じ 「小さな駅」 の駅前で

偶然遭遇しているとは

 

 

地方の数少ない

「待ち合わせ場所」 での話なら

いざ知らず

 

都会では

 

たくさんの電車が乗り入れるような

大きな駅であっても

 

偶然知り合いに会うなんてことは

まずありません

 

 

彼女曰く

 

その駅は

彼女もそのとき

はじめて降りた駅とのこと

 

そしてその彼女は

初めて訪れた

その駅の駅前で

 

「待ち合わせ」 している自分を

発見してしまった

ようなのです

 

 

彼女は今までに

たった一度だけ

自分の顔写真を

見ているだけ

 

普通なら

たったの一枚の写真で

人を見分けるのは

かなりの困難を伴います

 

しかも

 

その時にその場にいることは

前以って知らされてはいないのです

 

 

何回も何回もメッセージで

 

―― 今日はデートだったんでしょ?

 

と問い詰める彼女に

しらばっくれる自分

 

 

しかし話を聞いていくうちに

確かに 「その駅」 であることに

間違いないことが分かってきます

 

彼女はひとつひとつ

何故その駅に行くことになったのか

その経緯を説明しはじめます

 

 

その駅のその場所で

偶然バッタリと出会うのも

かなりの低い確率なら

 

まだ実際には会ったことのない人を

その場で認識出来るというのも

極めて稀な能力

 

彼女に 「当日会おう」 と言われ

「会えない」 と答えた男

 

その二人が偶然にも

そこでバッタリと 「出会って」 しまうわけです

 

そんなことあり得ない

 

そんなのを 「ドラマ」 にしたら 「ブーブー」 と 

たくさんのクレームが来るのは必定

 

それだけでも

あり得ないのに

 

一回も会ったことのない男女が

約束してもいない場所で

相手を見つけ出すことなんて

 

本当に絶対あり得ません

 

しかも

 

こんな 「小さな駅」 の駅前で

 

待ち合わせしている人も

決して多くはない

「小さな駅」 の駅前で

 

です

 

約束場所と

待ち合わせの時間を

きちんと決めておいても

 

会えないなんてことは

ザラにあるのに

 

こんなこと

本当に絶対あり得ません

 

 

(つづく)

 

―――

 

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