2ntブログ
2018/04/22

【緊縛小説】 縄絡み (2-2)

§2の2 お邪魔する

 

その声は、

職人の家に、初めて、電話したときに、

電話に出た、声の女性だった。

 

職人が、慌てて、ビデオを止めると、

奥さんは、買い物で、買って来たものを、

冷蔵庫にしまいながら、

 

   「別に、何見てたか、分かってるんだから、

    慌てて消さなくても、いいわよw」

と、笑った。

 

自分が、

 

   「どうも、お邪魔しています・・・」

 

と、半分、気が動転しながら、あいさつをすると、

奥さんは、

 

   「この前の、学生さんね?

    晩ご飯を食べて、ゆっくりしていってね・・・^^」

 

と言うと、さっそく、台所で、支度を始めた。

 

職人は、小柄な体格で、

どちらかと言うと、飄々(ひょうひょう)としていて、

何処か憎めない、ひょうきんなタイプ。

 

一方、職人の奥さんは、

グラマーで、胸もお尻も、大きくて、

品を感じさせる、結構美形の女性。

 

まさしく、「月とすっぽん」 という言葉が、

ピッタリの、夫婦だった。

 

奥さんは、手際良く、準備をしながらも、

二人に、話し掛けてくる。

 

今日は、どうやら、昼過ぎから、

美容室に行って来たらしい。

職人も、やたらと、女房のことを褒めて、

自分に自慢してくる。

 

奥さんから、

 

   「お酒、飲めます?」

 

と聞かれたので、

 

   「はい・・・」

 

と答えると、二人分の、コップと小鉢が、

用意される。

 

職人が、2つのグラスに、ビールを注ぎ、

2人で、軽く、乾杯をすると、

職人は、あとは、手酌で飲み始めた。

 

どうやら、この家庭は、

亭主関白のようだった。

 

しばらくして、一通り、支度を終えると、

奥さんが、追加の小鉢とグラスを、

持って来ると、

 

   「わたしも、頂戴します」

 

と言って、職人と自分の間に、座り、

両手で、グラスを差し出すと、

職人が、奥さんのグラスに、ビールを注ぐ。

 

最初は、緊張していて、

生きた心地が、しなかったが、

陽気で、きれいな奥さんと、

一緒に飲むのは、

まんざらでもなかった。

 

奥さんが、職人と自分の共通の話として、

アルバイトのときの話を、持ち出し、

奥さんが、自分の肩を持って、

 

   「主人に、扱(こ)き使われなかった?」

 

と、自分に気遣いを見せると、

職人は、まるで聞き捨てならない、とばかりに、

真剣な面持ちで、

 

   「おいおい、そんなこと、ないよな?」

 

と、必死に否定し、弁明する。

 

   「こいつが、やってみたいって言うから、

    鏝均(こてなら)しも、やらせてやったんだよな?」

 

奥さんは、冗談だと思ったのか、あるいは、
話を真に受けているのが、面白かったのか、
笑い飛ばしていると、

職人は、そわそわし出して、目配せをして、

自分に、同意を求めてくる。

 

   「ホントの話ですw」

 

職人は、「ほらっ」 と言うと、

ビールを飲み干して、

 

   「こいつが、チンタラやってるから、

    ”そんなんじゃ、乾いちまうっ!” て言って、

    直ぐに鏝を、取り上げたんだもんな?」

 

そう言って、自慢げに笑う。

 

奥さんは、そんな職人が突き出した、

空っぽのグラスに、ビールを注ぐ。

 

この二人は、実に、

仲の良い夫婦なんだな、と思った。

 

そして、二人が、お付き合いを始めた当時、
どちらが、最初に惚れたのか、という話になると、

奥さんは、はじめは、

しつこかった職人のことが、
好きではなかったけれど、

職人の、一本気なところに、惚れたので、

最初に、口説いて来たのは、職人だと言い、

職人の方は、俺は酔い越しの金は持たず、

こいつが、最初に、俺に惚れた、と言って聞かない。

 

二人の会話の回転が早いので、

どうしても、アルコールのピッチも速くなる。

 

二人の男が、

清楚な、サマーセーターを着た、艶やかな女性を囲み、

美味しい肴をアテに、話に花を咲かせた。

 

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