「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ
ノーベル文学賞を受賞した、カズオ・イシグロの作品 「Never Let Me Go」 の邦訳版。
臓器提供のために生み出された 「クローン人間」 という空想の世界で、人の 「生」 に対する思いと、それに背反する 「愛」 を描く作品です。
まるで人間が 「ブロイラー」 になったような 「怖さ」 もありますが、しかし、そんな環境の中においても、人として美しいものがあるということ。
自分の置かれた環境というものは、その人では、どうすることも出来ません。
しかし、大切なのは、その中で精一杯生きるということ。
そして、自分が精一杯生きるということは、自分が今、置かれた環境から逃げようとするのではなく、自分で選べる範囲で選んで、精一杯苦しんで、思いっきりズタズタになること。
しかし、その行動の中核に 「愛」 と 「希望」 があるなら、どんな人生であれ美しいということです。
中核に 「金」 と 「名誉」 を置いて、どんなに贅沢で、楽な暮らしをしたところで、それは空しい人生。
大切なのは、自分の人生に 「楽」 を求めるのではなく、自分の人生を受け入れ、そして、とことん、自分の目標に向かって、突き進むことによって得られる、99%の苦しみによる緊張と、その合間にある、平凡な日常。つかの間の 「喜び」 による 「充実」 です。
「生きることって何だろう?」
そう考えさせられる 「ノベル」 です。
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この本を、読書好きで、背後を振り返っては、立ち止まってばかりいる、北国の 「ドMちゃん」 に捧げます。
皆、自分の人生は、他の人と違うかも知れないけど、しかし、そんなことは考えず、思いっきり突っ込んで、それで痺(しび)れなさい。
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