「『甘える』 ことと 『甘え』 の違い(6)」 からのつづき
誤解のないように書いておきますが、ひとつ前の記事で 「人に迷惑をかけない」 という表現は、例えば、親が子供に対して 「他人さまに対して、迷惑をかけない大人になりなさい。」 というのは、きちんと自立して、自分のことは自分で出来るようになりなさい・・・という意味で、自分が自分を律するために使われるのであれば問題ありません。
また、恥を恥とも思わず、他人に尻拭(しりぬぐ)いをさせてばかりの 「厚顔無恥(こうがんむち)」 な人に対して、「人に迷惑をかけるなっ!」 と言いたくなる気持ちは解ります。まあ、しかし、そういう連中にいくら口を酸(す)っぱく言ったところで、「かえるの顔に小便」 ですし、自分の身近なところで、依存体質の人に注意するぐらいのことは、有りでしょう。
問題視しているのは、「人に迷惑をかけない」 という標語のもと、なんでもかんでも、「人に迷惑をかけるのは悪」、あるいは、「自己責任」 として切り捨てようとする、「一部の社会」 の風潮です。
誰も、病気になりたくて、なるわけではありませんし、破産したくて破産するわけじゃありません。まあ、放漫経営を繰り返し、自らの屋台骨が揺(ゆ)らぐところもあるでしょう。しかし、そうした取引先の影響を受けて、巻き添えになるところも少なくないわけです。一般的な社会生活においては、まず、自分の取った行動による責任は、自分が負わされます。
イケダハヤトも 「自己責任とは 『他人のせい』 にすることではなく、『自分のせい』 にすること」 のところで、
” たとえば、ホームレス状態に陥った人を、「お前が今の状況に陥ったのは自己責任だ!」と語る。
ひきこもり状態にある人を、「ひきこもりになったのは自己責任だ!税金で助けるなんてもってのほかだ!」と主張する。
仕事で失敗した部下を、「お前が失敗したのはお前の責任だ!」と罵る。
「自己責任」を他人になすりつけるとき、その人はまさにその「自己責任」から逃れていることに気がつかなければなりません。平たく言えば「他人のせい」にしているというわけです。”
と言っていますが、「人に迷惑をかけない」 という言葉も、この 「自己責任」 という言い回しと同じような副作用がある 「両刃(りょうば)の剣(つるぎ)」 であるということ。
それは何故か?と言えば、ダラダラ自分に甘えている 「甘え体質」 の人を擁護(ようご)しようとしているわけではありません。
それとは逆に、この言葉に萎縮してしまったり、この言葉に過剰に縛られてしまっている 「甘え下手」 な人達がいるためです。
もし、自分が指導的立場にあるならば、まだ自立できていない、あるいは、自律できていない若者に対しては、自立を促(うなが)す意味でも 「人に迷惑はかけるなっ!」 と言うかも知れません。
それは、やはり、「鉄は熱いうちに打て」 ではありませんが、若いうちの努力は惜しむなっ!的なものです。(笑)
しかし、きちんと自立して、大人になったからには、大人として扱う必要が出て来ます。
大人になって社会に出たら、人に迷惑をかけてもいいんです。その代わりに、迷惑をかけた分、文句を言われたり、あるいは、その迷惑に応じてペナルティを科(か)せられるだけなんです。
法を犯せば、法で裁かれるだけです。自立できていようといまいと、子供だから…みたいな 「甘え」 は通用しません。
前の記事で 「醜悪」 と呼んだのは、そもそもの社会の成り立ちすら理解せず、いい歳こいて、こういった 「人に迷惑をかけるな」 とか 「自己責任」 論を展開する 「ネトウヨ系」? を指して言ったまでで、それ以上の意味はありません。
***
話を SM に戻しますが、このように 「甘え下手」 な人達の中には、自分ひとりでは回復できない状況になっているにもかかわらず、「自分が悪い」 あるいは 「自分のせいだ」 と考えて、動けなくなってしまう人達もいますし、また、自分を出して否定されること。特に弱い自分を攻撃されるのを極度に恐れている人などは、本人がいっぱいいっぱいになっているにもかかわらず、内在する自分の弱さが他人に露見しないよう、虚栄(きょえい)に走ったり、あるいは、自己のプライドに固執する人達もいます。
こういう人達の場合、きちんと 「甘え方」 を教えなければいけないのですが、「甘え下手」 だけに、甘えていいと分かった途端、今度は甘えのスイッチが切れなくなったりします。
甘えのスイッチを切れなくなった場合は、今度は、スイッチのオン・オフを身に付ける調教に切り替えるのですが、甘えることが許されると思った女性は、新たな世界が開けて、ただでさえぶっとびますので、それで糸が切れてしまうこともしばしば。
自分が SM に絡んで1回は会って、それ以降会わなくなる相手は、うまく相手との距離感を取ることが出来なかったり、感情表現が下手だったり、あるいは、感情のブレが激しく、最初から、脅迫的で心理的圧力を欲している被支配欲求の強い人達くらいなもんでしょうか。
そういった人達を除くと、ほとんどがこのどちらかに分類できると言っても過言ではありません。
(つづく)